【9月12日 AFP】米スポーツ用品大手ナイキ(Nike)が先週、米ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)のサンフランシスコ・フォーティナイナーズ(San Francisco 49ers)でプレーしていた元QBコリン・キャパニック(Colin Kaepernick)氏を大規模な広告キャンペーンに起用した。すると、これに反対する一部の人々からは批判の声が上がり、中には所有するナイキの製品を引き裂いて抗議する人まで現れた。

 だが、こうした反応が出るのは想定内だったはずだ。これまでにも、銃規制への支持を理由に、スポーツ用品小売りのディックス・スポーティンググッズ(Dick's Sporting Goods)が、全米ライフル協会(NRA)の支持層から不買運動を起こされたり、百貨店大手のメイシーズ(Macy's)やその他の小売店が、イバンカ・トランプ(Ivanka Trump)氏のアパレル商品を取り扱っていたことからやはりボイコットの対象とされたりした経緯があるからだ。

 ナイキと同じスポーツ用品のセクターでは、ニューバランス(New Balance)に対する抗議行動がこれまでにもあった。同社幹部がドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領の貿易政策を賞賛したことに反発し、一部消費者らが同社製のスニーカーを燃やして意思表示をしたのだ。他方、アンダーアーマー(Under Armour)も、最高幹部がトランプ氏を賞賛したために批判の声が集中した。

 だが、こうした前例があるにもかかわらず、ナイキが人権活動家のキャパニック氏を起用した背景には、ミレニアル世代や非白人の顧客らに対してブランドをアピールしたいとの考えが見え隠れしている。事実、マーケティング専門家の多くは、今回の動きをめぐり、トランプ政権下の政治的に分断した米国において、費用対効果を狡猾に計算した結果だと捉えている。

 ブランドの多くはこれまで、中心となる顧客層を定め、それをターゲットにしたイメージやキャッチコピー作りに打ち込んできた。すなわち、一部の顧客層を、暗黙のうちに他の顧客層よりも優先してきたことになる。もちろん、できるだけ幅広い顧客層を取り込もうとする従来の方法がなくなったわけではない。ナイキなど一部のブランドは、顧客層の取捨選択をしているが、多くはまだ、従来のやり方を続けている。