助けたくないなら土地を返せ、米支援中止で不安募るパレスチナ難民
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【9月6日 AFP】国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への資金拠出中止をドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が発表したことを受け、数万人が生活の全てをUNRWAの支援に頼っているヨルダン最大のパレスチナ難民キャンプには不安が広がっている。
「私たちの国はなくなってしまった。そして今度は、彼ら(米国)が私たちの生活を追い回している」と語るのは、ヨルダンの首都アンマン北方に広がるバカー(Baqaa)難民キャンプに暮らすザイナブ・アルダバさん(78)。1967年の第三次中東戦争、通称「六日戦争(Six-Day War)」を受けてこの難民キャンプが設置されたときから、ずっとここで生活している。
約11万9000人のパレスチナ難民が暮らすキャンプは、狭い通路が入り組み、ごみや廃水がいたるところにまき散らされている。住民のほとんどは「六日戦争」で東エルサレム(East Jerusalem)、ヨルダン川西岸(West Bank)、ガザ地区(Gaza Strip)がイスラエルに占領されたときに難民となった人々だ。中には、1948年のイスラエル建国に伴う第一次中東戦争で故郷を追われ、67年に再び住む家を失って難民となった人たちもいる。
「最後の審判の日、トランプ(大統領)は神様に顔向けできるのだろうか」とザイナブさんは問い掛ける。「このキャンプで私たちが直面している困難は、神様だけがご存知だ」
「仕事はなかなか見つからず、みんな失業中でお金がない。生きるのは難しい、本当に難しい」
■助けたくないなら土地・財産を返せ
UNRWAは、数百万人のパレスチナ難民には現在イスラエル占領下にある故郷に帰る権利があるとの立場をとっている。一方イスラエルは、この考え方が中東の紛争を長期化させているとUNRWAを非難しており、米国はイスラエルの見解を支持している。
パレスチナ人にとっては、第一次・第三次中東戦争で難民となった人々とその子孫の故郷への帰還権は、大義の中核を成すものだ。
パレスチナ人とその支持者たちはUNRWAについて、貧困層の生命線となるサービスを提供しており、パレスチナ紛争が公正な解決を見るまで活動を続ける必要があると指摘する。1949年創設のUNRWAはヨルダンやレバノン、シリア、パレスチナ自治区にあるパレスチナ難民キャンプに登録された500万人のうち、300万人以上を支援している。
「米国人が私たちを助けたくないなら、私たちの国と土地、財産を返してくれればいいでしょう」。夫を亡くし、月額わずか150ドル(約1万7000円)の生活費で13人の子どもたちと暮らすナジヤ・ファラジュ(Najiya Faraj)さん(70)は、「パレスチナの人々はかつて大きな家を持ち、農場や家畜を所有していたのに──今は、支援を請うほかない」と嘆いた。(c)AFP/Kamal Taha