【9月3日 AFP】農業大国フランスで1日、ミツバチの個体数激減の一因と指摘されるネオニコチノイド系農薬5種の作物への使用を禁止する法律が施行された。対象となるのはクロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサム、チアクロプリド、アセタミプリドの5種で、屋外と温室の両方で使用を禁じる。

 これまで欧州で使用を認められたネオニコチノイド系農薬はこの5種のみ。クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサムの3種については、既に欧州連合(EU)が農地での使用を禁止する採択を行っているが、フランスはさらに一歩踏み込んだ措置を取り、ハチ大量死の一因とみられる農薬の使用反対運動の先陣に立った。

 今回の禁止令導入を養蜂家や環境活動家は歓迎している。一方、穀物やテンサイの栽培農家は、大事な作物を害虫から守るのに効果的な代替手段がないとして失望感を表明している。

 1990年代半ばに普及したネオニコチノイドは、ニコチンに似た化学構造を持つ合成農薬で、虫の中枢神経系を攻撃する。それまで用いられてきた殺虫剤より害が少ないとされ、現在では果樹やテンサイ類、小麦、キャノーラ(セイヨウアブラナの一変種)、ブドウなど、花を咲かせる各種農産物の栽培に最も広く使用されている。

 しかし近年、ハチが一斉に姿を消す「蜂群崩壊症候群」と呼ばれる謎めいた現象が報告されるようになった。ダニ、ウイルス、カビと並び、殺虫剤が原因の一つとして挙げられているほか、これらの要因の相乗作用の影響も指摘されている。

 科学研究では、ネオニコチノイドがハチの生殖能力や蜜を探し集める能力に悪影響を及ぼしていることが確認されている。ネオニコチノイドにさらされたミツバチは、精子の質が低下したり、記憶と位置把握機能に混乱をきたしたり、病気への耐性が落ちたりすることが分かっている。

 また、人がニコチン依存症になるように、ネオニコチノイドにはハチに対する中毒作用があるとの研究結果もある。実験では、ハチは殺虫剤を含まない餌よりも、殺虫剤を混ぜた餌のほうを好んで摂取する傾向がみられた。

 今回の法施行では、農業以外での使用は禁じていない。また、アセタミプリドについては個々の状況に応じた例外的な使用を2020年7月まで認めている。(c)AFP/Amélie BOTTOLLIER-DEPOIS