【9月2日 AFP】カリブ海(Caribbean Sea)の島国アンティグア・バーブーダが強力なハリケーン「イルマ(Irma)」の直撃を受けてからほぼ1年となる1日、壊滅的な被害を受けたバーブーダ(Barbuda)島からアンティグア(Antigua)島に逃れ避難所で暮らしていた住民約40人が強制退去させられた。アンティグア島とバーブーダ島は、3島から成るアンティグア・バーブーダの主要2島で、2島間の距離は約64キロ。

 昨年9月上旬、カリブ海諸国は最強のカテゴリー5に発達し、すさまじい威力を持ったハリケーン「イルマ」に襲われた。特にバーブーダ島は家屋やインフラ設備が壊滅的な被害を受け、住民の大多数が姉妹島のアンティグア島に避難し同島で避難生活を送っていた。

 現在まで残っている避難所は首都セントジョンズ(St John's)にあるナショナル・テクニカル・トレーニング・センターが唯一となっていたが、1日には警察と政府当局者らが立ち入り、約40人の避難者を強制的に退去させた。避難者のうち半数は子どもで、最年少は生後1か月の乳児だった。

 政府によると、同センターのバーブーダ島住民たちは、これまで2回の退所通告を拒否して滞在し続けていたという。避難民らが所持品を持って船でバーブーダ島に帰還する費用は、政府が負担するとしている。

■全島避難で300年ぶりに無人に

 米国立ハリケーンセンター(NHC)が6月に発表した報告書によると昨年、カリブ海諸国と米南東部では「イルマ」の直接的な被害により47人が死亡。さらに米国では、間接的な影響で82人が死亡した。

 NHCの報告書によれば、バーブーダ島は「イルマ」の勢力が最大に達した時点で直撃を受け、空港など島のインフラ設備は95%が破壊され、水道や通信も遮断するなど「ほぼ居住不可能」な状態に陥った。このため、島民1800人のほとんどがアンティグア島へ避難。さらに、残っていた島民も新たなハリケーン「ホセ(Jose)」が接近した際に避難し、バーブーダ島は300年ぶりに無人となった。

 バーブーダ島における物的損害は1億5000万~3億ドル(約167億~約333億円)に達するとみられている。

 アンティグア島に避難してきた約1800人のうち、いまも避難所に残る住民たちは、バーブーダ島に戻っても住む家がないと話す。母子家庭や子どもを抱えた母親も多く、子どもたちに路上生活をさせるわけにはいかないと懸念している。(c)AFP/Gemma Handy