【8月31日 AFP】米メディアを「国民の敵」と攻撃するドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領を全米各紙が社説で一斉批判する運動を主導した米新聞社ボストン・グローブ(Boston Globe)の従業員に対し、殺害予告を繰り返したとして30日、カリフォルニア州在住の男が逮捕された。

 マサチューセッツ州地区連邦検事局は、カリフォルニア州エンシノ(Encino)在住のロバート・チェイン(Robert Chain)容疑者(68)を脅迫の容疑で逮捕・訴追したと発表した。

 米連邦捜査局(FBI)のハロルド・ショー(Harold Shaw)特別捜査官は、「誰しも自分の意見を表明する権利を持ってはいるが、殺害の脅迫は一線を越えており容認できない」と述べ、チェイン容疑者の逮捕について「脅迫はいたずらでは済まされず、連邦法に抵触する犯罪だと他者に警告する」意味があると説明した。

 ボストン・グローブをはじめ全米300紙を超える新聞社は今月16日、トランプ大統領の執拗(しつよう)なメディア攻撃を批判する社説を一斉に掲載した。

「ジャーナリストは敵ではない(Journalists are not the Enemy)」と題したボストン・グローブの社説は、「米国には今、現米政権の政策を公然と支持しないメディア関係者を『民衆の敵』と呼ぶスローガンをつくり出した大統領がいる」とした上で「これは、この大統領が口にしてきた数多くのうその一つにすぎない。昔のペテン師が期待して待つ観衆に『魔法』の粉や水をばらまいたのとよく似ている」と述べていた。

 連邦検事局によると、チェイン容疑者は8月10日から22日にかけて、ボストン・グローブ編集部に何度も電話をかけ、従業員を撃ち殺すと脅迫したほか、同紙を「民衆の敵」と呼んだ。

 ボストン・グローブはこの事件の宣誓供述書で、チェイン容疑者が複数の銃を所持していた点に言及している。また、チェイン容疑者は電話、「お前たちが大統領――正当に選ばれた合衆国大統領――への攻撃を続け、背信行為や扇動行為をやめない限り、私もボストン・グローブに対する脅迫や嫌がらせ、迷惑行為を続ける」と主張したという。

 チェイン容疑者は、有罪になれば最長5年の禁錮刑と25万ドル(約2770万円)の罰金刑を科される可能性がある。(c)AFP