【8月31日 AFP】米司法省は30日、名門ハーバード大学(Harvard University)が入学選考の際にアジア系の志願者を差別していると批判した。ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領政権は、米大学で広く行われている学生間の人種バランスに配慮した入学選考指針に反対しており、その姿勢を一段と強めた格好だ。

 司法省は、アジア系の学生団体がハーバード大を相手取って起こしている訴訟をめぐり、ボストンの連邦地裁に文書を提出。ハーバード大が入学選考で白人、黒人、ヒスパニック系の志願者を優先して、より成績優秀なアジア系志願者の機会を犠牲にしているとの学生団体の主張を支持する見解を示した。

 米大学は、学生間の人種バランスに配慮した入学選考指針、いわゆるアファーマティブ・アクション(差別是正措置)に基づき、学生数の少ない人種、特にヒスパニック系とアフリカ系の米国人の入学者数を増やす方向で入学選考を行ってきた。バラク・オバマ(Barack Obama)前政権はこの措置を支持していたが、トランプ政権は2か月前に支持撤回を発表している。

 ハーバード大は、同大のアファーマティブ・アクションがアジア系を差別し米公民権法に違反していると学生団体「SFFA(Students for Fair Admissions)」が2014年に訴えた訴訟をめぐり、最近、陪審なしの審理を要求。同大へのアジア系米国人の入学者数はこの10年間で29%増加し、今年の新入生は22.7%がアジア系、15.5%がアフリカ系、12.2%がヒスパニック系だと主張していた。

 しかし司法省は30日、ハーバード大は人種的偏見を持っていないと証明できてはいないと指摘し、略式判決への反対を表明した。

 司法省が連邦地裁に提出した文書は、ハーバード大が「一部の若者に名門校への入学許可と教育上の大きな利益を与えるか否かを決定する要素として、人種を任意に利用していると認めている」と指摘。「この記録上の証拠は、ハーバード大の人種に基づく入学選考手続きが、アジア系の入学志願者を他の人種と比べて著しく不利な立場に置いていることを示すものだ」と述べている。ジェフ・セッションズ(Jeff Sessions)司法長官は、文書の中で「すべての米国人は、人種を理由に入学を拒否されてはならない」と主張している。

 米連邦最高裁はこれまで幾度となくアファーマティブ・アクションを認める判断を下してきたが、トランプ大統領が指名した2人の判事はいずれも保守派で、この次の判断は反対に転じる可能性もある。(c)AFP