【8月27日 AFP】ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が自身の葬儀に参列しないこと──25日に脳腫瘍(のうしゅよう)のために死去したアリゾナ州選出の上院議員、ジョン・マケイン(John McCain)氏の最後の望みの一つはとてもはっきりしていた。

 マケイン氏とトランプ氏は、お互いに相手を好ましく思うそぶりすらみせなかった。それは単に相性や出自が全く異なるといった理由だけでは説明できるものではなかった。2人は根底から異なり、価値観も全く違う。その相違については、一般的にも広く知られていた。

 2015年6月、トランプ氏は大統領選に共和党から出馬することを表明し、この時、メキシコ系の不法移民を犯罪者呼ばわりした。この発言に対してマケイン氏は、トランプ氏が「おかしな人々を駆り立てる」ような言葉を使ったとして不快感をあらわにした。

 するとトランプ氏は、「マケイン氏は米海軍兵学校(US Naval Academy)をぎりぎりで卒業した『間抜け』だ」と反発し、さらに、マケイン氏の従軍経験についても難癖をつけた。これには、ベトナム戦争(Vietnam War)で負傷し、捕虜となった5年間について触れたものもあった。

 ベトナムで捕虜となり拷問を受けたマケイン氏は、帰国後に英雄として数々の勲章を授与されているが、これについてトランプ氏は、戦争の英雄になれたのは「捕まったから」だと述べ、「私は捕まらなかった人が好きだ」と言い放った。この発言には、複数の退役軍人団体など、多方面から非難が集中した。

 これに対してマケイン氏は、自らへの謝罪は求めず、その代わりに戦争で犠牲になった人々や捕虜となった人々の遺族に対して謝罪する義務がトランプ氏にはあるとの考えを示した。このやり取りを通じて、2人の性格の違いは浮き彫りになった。なお、トランプ氏は兵役を免除されているため、従軍の経験がない。

 しかし、ポピュリストのトランプ氏が共和党の大統領候補に指名されたことを受け、世間では「マケインスタイルの共和主義」、さらには2008年の大統領選でマケイン氏が採った、より体系化された選挙アプローチへの否定だとの見方が大方を占めた。