「プラハの春」弾圧から50年、犠牲者を追悼 反ロシアデモも チェコ
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【8月21日 AFP】チェコとスロバキアは21日、社会主義体制下にあったチェコスロバキアで巻き起こった民主化運動「プラハの春(Prague Spring)」が、ソ連の軍事介入で制圧されてから50年を迎える。チェコの首都プラハでは弾圧の犠牲者を追悼する式典が企画されている一方、これを機に当時と現在の政治状況の類似性を指摘する動きもある。
「プラハの春」は1968年の春、共産党の一党独裁だったチェコスロバキアで新たに第1書記に就任したアレクサンデル・ドプチェク(Alexander Dubcek)が、「人間の顔をした社会主義」を目指して進めた民主的改革運動。
しかし、同年8月20日から21日にかけて、ソ連を主体にブルガリア、東ドイツ(当時)、ハンガリー、ポーランドのワルシャワ条約機構(Warsaw Pact)5か国軍がチェコスロバキアに侵攻。民主化の動きは徹底的に弾圧され、「プラハの春」は終わった。歴史家らによると、弾圧の初日だけで約50人のチェコスロバキア人が死亡。ソ連占領下の犠牲者は約400人とされる。
■「1968年と今は似ている」
「プラハの春」弾圧50年の前夜となる20日午後、チェコの首都プラハのロシア大使館前では複数の非政府組織(NGO)が主催する抗議デモが行われ、300人ほどが「私たちは忘れない」「ロシアの帝国主義を阻止せよ」「自由は真実の中にある」などと書かれた横断幕を掲げて参加した。
デモを主催した親欧州連合(EU)派の市民運動NGO「パルス・オブ・ヨーロッパ(Pulse of Europe)」のトマシュ・ぺジンスキー(Tomasz Peszynski)氏はAFPの取材に、「プラハ市民は断固として占領を拒否したのに、一部のロシア人はいまだに占領は国際的な支援だったと思い込んでいる」と述べ、ソ連時代の人々のように、帝国主義を続行するロシアの現政権に立ち向かうようロシア国民に呼び掛ける手紙を書いたことを明らかにした。
ぺジンスキー氏は「50年前のような介入は現在も起きている。ただし現代の介入は戦車ではなく、プロパガンダやフェイクニュース、選挙に影響を及ぼす手法によるものだ」と指摘する。
抗議デモではチェコ国旗や欧州連合、北大西洋条約機構(NATO)の旗のほか、ウクライナの旗も見られた。ウクライナ国旗を手にした参加者は「ソ連共産党による1968年の(プラハ)侵攻と、オリガルヒ(新興財閥)が実質的に権力を独占している現在のロシアの状況とは、確実に似ている」とAFPに語った。
■親ロシア派のチェコ大統領は沈黙
チェコ公共テレビは21日、昼間は「プラハの春」弾圧の特集番組のみを放映し、夜にスロバキアのアンドレイ・キスカ(Andrej Kiska)大統領による記念演説を放送する予定だ。
一方、親ロシア派で元共産党員のチェコ大統領、ミロシュ・ゼマン(Milos Zeman)氏は追悼行事には一切参加しないと表明しており、「プラハの春」弾圧50年に関しても沈黙を貫いている。
(c)AFP/ Jan MARCHAL