【8月15日 AFP】イタリア北部ジェノバ(Genoa)で崩落した高架橋は、1960年代に建設されて以来、いくつもの構造上の問題を抱えていた。そのため大規模な補修が行われ、専門家からも厳しく批判されてきたが、惨事を防ぐことはできなかった。

 地元で「モランディ(Morandi)」と呼ばれているこの橋は、1963年から67年にかけて建設された。支間長(スパン)は最大で219メートル、全長は1.18キロ。アーチ部分は高さ90メートルのコンクリート製の橋脚で支えられている。14日に200メートルにわたって崩落し、約30人が死亡した。15日も行方不明者の捜索活動が続いている。

 プレストレスト・コンクリート(PC)鋼材を使った建築技法は設計したイタリア人技術者、リカルド・モランディ(Riccardo Morandi、1989年に死去)が得意としたもので、アレーナ・ディ・ヴェローナナ(Arena di Verona)のウイング部(1953年)などでも用いられている。

 しかしイタリアの工学専門サイト「インジェニェーリ・インフォ(Ingegneri.info)」が14日掲載した記事によると、この橋をめぐっては以前から「構造上の疑念」があり、「悲劇がいつ起きてもおかしくない」状態だった。

 鉄筋コンクリート構造を専門とするジェノバ大学のアントニオ・ブレンチキ(Antonio Brencich)教授はラディオ・カピターレ(Radio Capitale)に、「使われた建築技法に関連した極めて深刻な腐食問題」があったと語り、継続的な保守工事が必要だったと強調している。

 経済ニュース専門の通信社ラディオコル(Radiocor)によれば、モランディに関してはイタリア当局が最近、補修工事のため2000万ユーロ(約25億円)規模の入札を実施。今回崩落した橋脚などを補強する予定だったという。

■同様の事故に警告

 モランディは年間2500万台もの車両が通行する重要な道路だが、2009年から取り壊しが議論されてきた。

 インジェニェーリ・インフォによると、モランディのような橋には100年以上の耐用年数が求められるが、モランディの場合、完成からしばらくするとコンクリートの劣化やひびの修復のため大規模な工事が必要となっていた。2000年代初めには、1980年代から90年代にかけて取り付けられたサスペンションケーブルを交換した。

 ジェノバ(Genoa)建築当局の元責任者、ディエゴ・ゾッピ(Diego Zoppi)氏は14日、「50年前われわれは鉄筋コンクリートに限りない信頼を置き、永久にもつと考えていた。だが数十年しかもたないことが分かった」と記者団に語った。

 ゾッピ氏は、イタリアで1950~60年代に造られたインフラは「差し迫った改修の必要がある」と述べ、しっかり改修工事をしなければ今回と同様の惨事が起こるのは避けられないと警告している。(c)AFP