【8月14日 AFP】農薬大手モンサント(Monsanto)の除草剤のせいでがんになったとして、同社を相手取り訴えた裁判で、原告の米国人男性が予想外の勝利を収めたことから、今後、同様の訴訟がせきを切ったように起きる可能性が出てきた。今年モンサントを買収したばかりのドイツ製薬大手バイエル(Bayer)は、この大きな買い物を後悔することになるかもしれない。

 毒性が指摘される除草剤「ラウンドアップ(Roundup)」から遺伝子組み換え(GM)種子の使用に対する懸念まで、約630億ドル(約7兆円)規模とされるバイエルとモンサントの合併について、知っておくべき事柄を挙げる。

■ヘロイン

 1863年にドイツで創業されたバイエルは、今でもアスピリンの製造で最もよく知られている。一方、不名誉な歴史としては、20世紀初頭に短期間、モルヒネに代わるせきの薬としてヘロインを販売していたことがある。

 第2次世界大戦中のバイエルは、ナチス・ドイツ(Nazi)が強制収容所のガス室で使用した「ツィクロンB(Zyklon B)」という殺虫剤を製造していたイーゲー・ファルベン(IG Farben)という企業連合の傘下に入っていた。

 近年のバイエルは何度も企業買収を繰り返し、化学・製薬業界の巨大企業となり、全世界で約10万人を雇用している。

■枯れ葉剤

 一方のモンサントは1901年、米ミズーリ州セントルイス(St. Louis)で創業。人工甘味料サッカリンのメーカーとしてスタートした。

 1940年代には農業用の化学製品を製造するようになった。除草剤「2,4-D」はそのうちの一つで、ベトナム戦争(Vietnam War)では、別の有毒物質と合わせて枯れ葉剤が作られた。

 1976年、除草剤「ラウンドアップ」が発売となった。これは、モンサントの製品のなかで、世界的に最も広く知られているものと考えられる。

 モンサントの科学者チームは1980年代、植物細胞の遺伝子組み換えを初めて行った。その後、他の種苗メーカーの買収を重ね、GM種子の栽培試験に着手し、ラウンドアップ耐性のある大豆やトウモロコシ、綿、その他の穀物などを開発した。