【8月9日 AFP】イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」が、未成年者の処刑や誘拐など、世界を最初に震撼させた当時の忌まわしい戦術を復活させることで勢力を盛り返そうとしていると、複数の専門家が分析している。

 ISは7月末、シリア南部スウェイダ(Sweida)県で自爆攻撃や銃、刃物などによる攻撃を行った際に、イスラム教ドゥルーズ派のシリア人30人以上を誘拐。そのうちの一人だった19歳の学生を先週、斬首した。

 ISの公式メディアは一連の攻撃について直後に犯行声明を出したものの、プロパガンダ用のメディアは誘拐について一言も触れていない。だが地元情報筋や戦闘監視団によると、ISはシリア政府に拘束されている司令官やその他の戦闘員を、ドゥルーズ派の人質らと交換することを目的に協議を行っているという。

 タハリール中東政策研究所(Tahrir Institute for Middle East Policy)のハッサン・ハッサン(Hassan Hassan)上級研究員は「彼らは公然と人々を殺害している一方で、背後では人質を作って交換条件として利用している可能性がある」と指摘。「これはとても重要な点だ。すべては戦闘部隊を復活させ、要員の一部を取り戻し、拉致されたり収監されたりしたメンバーをリーダーや戦闘員として補充するための試みの一部だ」と語った。

 ISは2014年にシリアとイラクにまたがる「カリフ制国家」の樹立を宣言したが、昨年には2つの要衝都市モスル(Mosul)とラッカ(Raqa)を失い、数か月前にはシリアの首都ダマスカス郊外の拠点からも駆逐された。ISの最高幹部の多くは殺害されたが、シリアのアサド政権と米主導の連合軍は、悪名高い外国人の傭兵を含むIS戦闘員らを国内各所で別々に拘束している。

 ドゥルーズ派の宗教指導者の一人によると、人質となっている女性14人と子ども15人に関するシリア政府との解放交渉は、ロシアの仲介によって行われているという。少年の斬首は、7月25日の開始以降、一般市民を中心に250人以上が殺害されているISの残忍な攻撃の中で、最新の衝撃だ。ドゥルーズ派は、7年にわたるシリア内戦の影響を比較的受けずにきたが、今回の暴力によって大きな打撃を受けた。

「彼らは欧米諸国を攻撃するのと同じように、ソフトターゲットを必要としている。ソフトターゲットは、ISの勢力や残忍さを最大限に発揮させ、支援体制に打撃を与える。分断し、征服する戦略だ」とハッサン氏は語る。

 少数派集団を狙ったISによる最も悪名高い襲撃は、2014年のイラクのヤジディー教徒に対するものだろう。この時は数万人のヤジディー教徒が家を追われ、少女や女性が戦利品として捕らえられた。

 仏パリを拠点とするあるシリア専門家は、ドゥルーズ派に対する襲撃は、そうした暗たんたる時期を彷彿とさせると語った。