【8月9日 AFP】カナダとサウジアラビアの間でにわかに緊張が高まっている。人権活動家の拘束をカナダ政府が批判したことに反発するサウジ政府は、大使追放や新規の取引停止に続き、学生の留学先振り替えやカナダ資産の売却など追加の報復を続々と準備。カナダのジャスティン・トルドー(Justin Trudeau)首相は8日、「サウジとの関係悪化は望んでいない」としながらも、自身これまでに行った批判について謝罪を拒否し、人権問題では一歩も譲らない姿勢を示している。

 カナダ政府は先週、女性の権利の擁護に取り組むサマル・バダウィ(Samar Badawi)氏ら、サウジで拘束された人権活動家の「即時解放」を要求。これに対しサウジは6日、駐サウジ・カナダ大使の追放や駐カナダ・サウジ大使の召還、新たな貿易や投資の全面的な凍結に踏み切った。

 サウジの対抗措置はそれにとどまらない。国営航空会社のサウディア(Saudia)がカナダの最大都市トロントへの路線停止を発表、政府はカナダで学ぶ大勢のサウジ人学生について他国に留学先を変更させることも明らかにした。

 国営メディアは8日、サウジがカナダでの治療プログラムをすべて中止し、カナダで治療を受けているサウジ人患者全員を他国に移動させると報じた。

 さらに英紙フィナンシャル・タイムズ(Financial Times)によると、サウジ中央銀行は在外資産の管理担当者に対して、「どんなに費用がかかろうとも」、保有するカナダ国債やカナダ企業の株式、カナダドルを手放すよう指示したという。

 だがトルドー首相の立場は揺るがない。8日には「カナダは人権問題について、私的な場でも公的な場でも強くはっきり主張していく」と言明した。

 一方で「サウジアラビアとの関係悪化は望んでいない」とも述べ、カナダ政府はサウジ政府が「人権問題に関して進展している」ことを認識しているとも言及した。

 トルドー首相によると、カナダのクリスティア・フリーランド(Chrystia Freeland)外相が7日、この問題の解決を目指してサウジのアデル・ジュベイル(Adel al-Jubeir)外相と長時間にわたって会談した。「外交交渉は続いている」という。(c)AFP/Michel COMTE, with Anuj Chopra in Riyadh