イタリア、トマト収穫する外国人労働者の窮状 交通事故相次ぎ16人死亡
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【8月7日 AFP】イタリア南部プーリア(Puglia)州で今月に入り、外国人農業労働者が死亡する交通事故が相次いで2件発生し、計16人が死亡した。これを受けてイタリア政府は6日、トマト収穫に従事する外国人労働者の劣悪な状況の改善に努めると表明した。
2件の事故はいずれもプーリア州フォッジャ(Foggia)の近くで起きた。まず4日にアフリカ出身の農場労働者らを乗せた車とトマト輸送トラックが衝突して4人が死亡、4人が重体となった。さらに現地報道によると、6日にはその日の収穫作業を終えて仮住まいの家に戻る労働者らを乗せたワゴン車がトマトを輸送中の大型トラックと正面衝突し12人が死亡した。消防当局によると12人はいずれも欧州連合(EU)の市民ではなかった。
フォッジャでは毎年夏になると欧州やアフリカから来た数千人規模の労働者が照り付ける太陽の下でトマトの収穫に従事している。イタリアで農作業に従事する出稼ぎ労働者らのほとんどは正規の労働許可証を取得しているが、法律が定めた賃金や福利厚生が与えられている例はまれで、多くの労働者が劣悪な環境での生活を強いられている。
労働者らは日雇い労働を仲介する業者に賃金の一部を搾取される。犯罪組織と結託している仲介業者もいる。だが仲介業者に頼らなければ労働者らは自ら仕事を探し、農場まで自転車か大勢の労働者でぎゅうぎゅう詰めのおんぼろ車で通わなければならない。
外国人労働者の支援団体や労働組合は何年も前からトマト収穫の最盛期に外国人労働者向け公共輸送をフォッジャ周辺に整備するよう求めてきたが、プーリア州のミケーレ・エミリアーノ(Michele Emiliano)知事は6日になって、こうした公共交通の予算を計上すると明言した。その上でエミリアーノ知事は、農家の協力と透明性の確保が不可欠だと強調した。
一方でプーリア州のトマト農家も大規模小売業者からの価格引き下げ要請で厳しい立場に置かれている。
ルイジ・ディマイオ(Luigi Di Maio)副首相兼経済発展・労働相も同日、プーリア州の現状を「どんな仕事でも引き受けようと必死な人々を搾取する恥ずべき制度だ」と非難し、同州の状況を監視するスタッフの増員を約束した。ただ、ディマイオ氏が率いるポピュリスト政党「五つ星運動(Five Star Movement)」は、反移民を掲げる極右政党「同盟(The League)」と連立政権を組んでいる。
ジュセッペ・コンテ(Giuseppe Conte)首相もフォッジャを7日に視察する意向を示している。(c)AFP