【8月19日 AFP】トーシャ・ガリビャン(Tosya Gharibyan)さんは、ジャガイモを貯蔵したいので家の地下を掘ってほしいと夫に頼んだ。その時、夫が地下迷宮をつくり上げるとは夢にも思わなかった。この地下迷宮は今や、アルメニアの主な観光地の一つになっている。

 アルメニアの首都エレバン郊外の村アリンジ(Arinj)にあるトーシャさんの家は一見、普通の平屋に見える。だが、トーシャさんの亡くなった夫、レボン・アラケリャン(Levon Arakelyan)さんが23年をかけ、心を込めて掘った地下洞窟を見ようと、世界中から観光客がやって来る。曲がりくねった地下道が張りめぐらされた洞窟は、「レボンの聖なる地下」と呼ばれている。

 トーシャさんは観光客を、ひんやりとした静かな洞窟へと案内する。7部屋が通路でつながっており、まるで中世のアルメニア教会のファサードのようにロマネスク様式の柱や装飾で飾られている。

「夫は掘り始めると、止まらなくなってしまったのです」とトーシャさんは語った。レボンさんが洞窟を掘り始めたのは1985年。それから20年以上かけ、火山岩層を広さ280平方メートル、深さ21メートルまで掘り進めた。使ったのは手で持つ簡単な道具だけだ。

 レボンさんは2008年、67歳の時に心臓発作で亡くなった。二つのトンネルを隔てていた最後の壁を壊した後だった。(c)AFP/ Mariam HARUTYUNYAN