【8月7日 AFP】もし両親に痩せることを説得されていなければ、世界最高額のGKにはなれなかったかもしれない――。6700万ポンド（約98億円）の移籍金でイングランド・プレミアリーグのリバプール（Liverpool FC）と契約したブラジル代表の正守護神アリソン（Alisson Ramses Becker）は、かつてビスケットや炭酸飲料を好み、両親からはサッカーをやめて勉強に専念してほしいと思われていた。

　アリソンのメンターであるダニエル・パヴァン（Daniel Pavan）氏は「ある日、アリソンの両親が私のもとを訪れた。両親は、彼にプロになる見込みはなく、サッカーをやめてほしいと思っていた」と英大衆紙サン（Sun）に話している。「両親は、アリソンには勉学の分野で成功する見込みがあり、チームを離れるべきだと考えていた。しかし私は、当時の年齢を考えるとアリソンはまだ成長して上達するはずであり、GKとして素晴らしい将来性を持っていると両親をなんとか説得した」

　パヴァン氏は当時、アリソンは今後間違いなく成長し、ペナルティーエリア内で威圧感を発揮する存在になるから、周囲と比較して身長が低いことを心配すべきでないと両親に伝えたという。現在、アリソンの身長は193センチメートルにまで伸びた。

「アリソンがサッカーを始めたとき、他の少年たちと比べて成長が遅かった。そのため体の小さなアリソンはGKになり、他の男の子たちよりも体重が重くなった。その結果、彼は試合の先発メンバーから外れることが多くなり、時にはベンチにも座れなかった」

「一般的に、彼は同じ年代の少年と比較すると体の動きが遅かったが、技術の面では光るものを持っていた。初めて見たときから、われわれは間違いなく彼が成長すると思っていたよ。両親が私の話に耳を傾けてくれてありがたかった。その後アリソンは1年で6.5インチ（約17センチメートル）も身長が伸びたんだ」

　アリソンの母は不動産の仲介人として働き、父は革製品や靴を扱う商人だった。そうした中流階級の家庭に生まれたというのは、ブラジルのサッカー選手では珍しいことだが、アリソンは15歳の頃に加入したブラジルのインテルナシオナウ（Internacional）で自らの能力を必死に示そうとし、後に同クラブで100試合出場を成し遂げた。

　パヴァン氏は、自身の教え子がW杯の本大会でプレーしている姿を目にし、結果的にプレミアリーグへの高額移籍につながったことを非常に誇らしく思うと述べた。2年後に発生するリバプールへの移籍金と比較すれば少額だが、2016年に750万ユーロ（約11億円）の移籍金でアリソンがイタリア・セリエAのASローマ（AS Roma）に移籍してからも、パヴァン氏はアリソンと連絡を取っているという。

「アリソンがインテルナシオナウに在籍していた13年のうち、8年間は私と一緒にいた。それは、あらゆる面で学びと教えに満ちた期間だった。一人のアスリートとしてだけでなく、一人の人間、そして一人の市民として、われわれはアリソンに大きく貢献できたと思っている」 (c)AFP