「アインシュタインは正しかった」 相対性理論の予言の一つを初確認
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【7月27日 AFP】国際天文学者チームは26日、超大質量ブラックホールがその近くを高速で通過する恒星に及ぼす重力の影響を観測することにより、理論物理学者アルバート・アインシュタイン(Albert Einstein)が提唱した一般相対性理論の予言の一つが正しいことを初めて確認したとする研究結果を発表した。
アインシュタインは、音波の波長が伸び縮みすることで通過する列車の音の高さが変化するように聞こえるのと同様に、大きな重力によって光の波長が伸びる可能性があると予測していた。
独マックス・プランク地球外物理学研究所(Max Planck Institute for Extraterrestrial Physics)が主導する国際研究共同体「GRAVITY」の研究者らは、太陽系を含む天の川銀河(銀河系、Milky Way)の中心にあるブラックホール「射手座A*(Sagittarius A*)」を使えば、アインシュタインの理論を検証するための「申し分のない実験室」ができることに気が付いた。
ブラックホールは、光すら抜け出せないほど強力な重力を持つ極めて高密度の天体。超大質量ブラックホールの射手座A*は太陽の400万倍の質量を持ち、銀河系で最大のブラックホールとされている。
研究チームは、5月19日に射手座A*の近くを通過した「S2」と呼ばれる恒星を追跡観測した。S2の移動速度は時速2500万キロ超に及んだ。
研究チームは、さまざまな測定機器を用いてS2の速度と位置を算出し、アインシュタインの予測と比較した。アインシュタインは、重力の影響で光の波長が長くなる「重力赤方偏移」と呼ばれる現象を予言していた。この赤方偏移はニュートン物理学では説明できない。
研究チームによると「今回の結果は一般相対性理論と完全に一致」しており、「極めて強力な重力場の影響に関する理解の向上に向けた大きな進展だ」という。研究結果は27日の国際天文学誌アストロノミー&アストロフィジックス(Astronomy and Astrophysics)に発表された。
こうした重力場の影響の測定に成功した観測的研究は、今回が初めてだ。
欧州南天天文台(ESO)は2016年、南米チリにある超大型望遠鏡VLT(Very Large Telescope)を用いて射手座A*の近くを通過するS2を観測した。だが、ESOが当時使用していた機器は、今回の重力赤方偏移を検出できるほど精度が高いものではなかった。
今回の結果について、ESOは「一般相対性理論の方程式を詳述した論文の発表から100年以上が経過した現在、アインシュタインが正しかったことが再度証明された。彼が想像できたと思われるものをはるかに上回る極限環境の実験室で、それが証明された」と述べている。
天文学者らはすでに、ブラックホールの近くを通る光が曲げられるというアインシュタインの一般相対性理論が予言した別の作用を研究に利用している。重力レンズと呼ばれるこの作用は、ブラックホールの背後を観測するのに用いられている。
重力によるS2の軌道の変化を追跡した一般相対論の最新検証について、天文学者らはこの結果を実用面で利用できる可能性があると期待している。今回の結果から、ブラックホール周囲の質量分布に関する情報が得られるかもしれない。(c)AFP/Pascale MOLLARD