【7月25日 AFP】「人種差別的な扱い」を理由にサッカードイツ代表から引退したメスト・エジル(Mesut Ozil)に対して、トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン(Recep Tayyip Erdogan)大統領が電話をかけて、その決断を称賛していたことが分かった。ドイツ国内で大きな波紋を呼んでいるエジルの代表引退だが、大統領は明確に態度を示した形となっている。

 トルコにルーツを持つエジルは、2か月前にエルドアン大統領と面会したことで大きな批判を受け、前週末に人種差別的な扱いを理由に突然の代表引退を発表した。ドイツ国内のエジルに対する意見が分かれている一方、欧州にイスラム教への偏見があると考え、これに対抗する取り組みを政府として進めているトルコはこの行動を温かく歓迎していた。

 トルコの半国営アナトリア(Anadolu)通信によれば、エルドアン大統領は「昨晩メストと話した。彼が声明で示した態度は非常に愛国的で、間違いなく称賛に値する振る舞いだ」と話し、「彼のまぶたに口づける」とトルコで親愛の情を示す表現を使った。

「こうした類いの人種差別は容認できない。ドイツ代表チームに多くをささげ、代表の成功に大きな役割を果たしてきた若者への反イスラム的な態度は、まったくもって受け入れられない」

 2014年ブラジル大会(2014 World Cup)ではW杯制覇の立役者の一人だったエジルだが、2018年ロシア大会(2018 World Cup)では大きな批判にさらされた。特に問題視されたのが、トルコの大統領選挙を1か月後に控えた5月にエルドアン大統領と面会したことで、その際の写真は物議を醸した。

 エジルはドイツサッカー連盟(DFB)の幹部とスポンサー、メディアを批判し、代表引退を表明している。エジルの決断はヨアヒム・レーブ(Joachim Loew)監督にとっても驚きだったようで、監督の代理人は日刊紙ビルト(Bild)に対して「代表監督も私も、事前に知らされてはいなかった」と話した。

 イングランド・プレミアリーグのアーセナル(Arsenal)に所属するエジルがエルドアン大統領と面会したのは、大統領が英ロンドン(London)を訪問した際のことで、エバートン(Everton)でプレーするドイツ生まれのトルコ人選手ジェンク・トスン(Cenk Tosun)と、マンチェスター・シティ(Manchester City)に所属するドイツ代表のイルカイ・ギュンドアン(Ilkay Gundogan)も同席していた。

 エルドアン大統領は、「私がロンドンで、トルコにルーツを持つメスト、イルカイ、ジェンク・トスンと写真を撮ることも許されないとはいったいどういうことか。耐えがたい話だ」と述べている。(c)AFP/Raziye AKKOC