【7月24日 AFP】英イングランド南西部エイムズベリー(Amesbury)で先月、神経剤「ノビチョク(Novichok)」にさらされて一時重体となっていた男性が地元紙の取材に応じ、生きていることを幸運に感じると述べると同時に、パートナーの死から立ち直れないという心境を吐露した。

 20日に退院したチャーリー・ローリー(Charlie Rowley)さん(45)は非公開の場所から大衆紙サン(The Sun)の電話取材に応じ、ある香水瓶を見つけてパートナーのドーン・スタージェス(Dawn Sturgess)さん(44)に贈ったと話した。その瓶には、ロシア人の元二重スパイへの襲撃にも用いられたノビチョクが入っていた。

 ローリーさんとスタージェスさんは先月30日、エイムズベリーにあるローリーさんの自宅で倒れ、スタージェスさんは今月8日に死亡。警察の対テロ部門が殺人事件として捜査を開始している。

「ドーンのことで非常に落ち込んでいます」とローリーさん。「自分が入手し、ドーンにプレゼントした化粧瓶を見つけたことは覚えています」

「彼女の身に起こったことが悲しくてなりません、怖いし、衝撃的です。彼女が亡くなったと聞かされた時、私はまだ投薬治療中でした。いつか立ち直れる日が来るという気がしません」

「ドーンの家族に心を寄せています。私が生きているのは驚くべきことです。命拾いしたことをある意味幸運に感じていますが、同時にあまりに多くのものを失ってしまいました」

 ローリーさんは、瓶を捨て去った人物について、「不注意にもほどがある、その辺に物を放置しっぱなしにして去ってしまうなんて」と非難。「子どもたちが遊んでいたとしても不思議はない」

 ただローリーさんは、瓶の入手場所の記憶がなく、「その点はまだぼんやりしています。どこだか分かりません」と話している。自分の両手の中で瓶が割れたのを覚えているという。

 ローリーさんは、2年間ほぼずっと一緒にいたというスタージェスさんが病院に急送された数時間後に気分が悪くなったと振り返った。

「私は完全に混乱していた。当時は頭の中で、ドーンを見舞いに行きたいとだけ考えていた。その日の朝、具合が悪くなったのを知っていたので」とローリーさん。

「数時間後、今度は自分の体調が悪くなった」「それから覚えているのは、2週間の人工的な昏睡(こんすい)状態から目覚めたことだけ」

 サン紙は、ローリーさんが自宅付近で暮らしており、現在も警察から時折事情聴取を受けていると伝えている。ローリーさんの自宅そのものは、警察による封鎖が続いている。

「ワイン1本でも飲みに出掛けたい。退院できたのは本当にうれしいけれど、部屋に閉じ込められてたくさんの薬を飲んでいる。たばこ一服のためには外に出してもらえているが、退屈で仕方がない」とローリーさんは話している。(c)AFP