【7月24日 AFP】ゾウはハチに刺される痛みを決して忘れない。ゾウの目と、鼻の内側の敏感な軟組織は、痛みを伴うハチ刺されに特に弱く、専門家によれば、アフリカゾウ(学名:Loxodonta Africana)はハチが危険を感じて群れで飛ぼうとするときに発するにおいを認識することを何百年もかけて学習してきた。ハチに対するこの研ぎ澄まされた警戒心を、ゾウと人間との摩擦が生じる恐れのある地域でゾウを撃退するために利用する方法を補完した研究論文がこのたび発表された。

 米科学誌カレント・バイオロジー(Current Biology)に掲載された論文によると、研究チームは、南アフリカの野生保護区グレータークルーガー国立公園(Greater Kruger National Park)で実施した3か月間の現地実験で、ハチのフェロモン(生理活性物質)をたくさん付着させた白い靴下を木の枝につるした。このフェロモンは、ミツバチが生命の危機を感じたときに体から放出して仲間に知らせる情報伝達のための化学物質だ。

 同論文によると、靴下に近づいたゾウ29頭のうち25頭が「警戒心を強めたり不安を抱いたりしたことを表す典型的な兆候を示し、ついには静かに立ち去った」という。

 ゾウが立ち去る原因が靴下そのものではなく、靴下から発せられるにおいであることを確かめるために、研究チームはハチのフェロモンを付着させていない同種の靴下をつるしたところ、ゾウは靴下に興味を示し、鼻で持ち上げたり、時には口に入れたりすることもあった。

 アフリカではすでに、作物をゾウから守るために市販のミツバチの巣箱をフェンス沿いに並べて設置している農業経営者もいることから、今回の実験結果は、ゾウとの衝突を回避する、より安価な方法が存在する可能性を改めて示唆している。

 論文の主執筆者で、米ハワイ大学マノア校(University of Hawaii at Manoa)植物環境保護科学部のマーク・ライト(Mark Wright)教授(昆虫学)は、「過去の研究では、活動中のハチの巣箱を設置することでゾウに作物などを荒らされるのを阻止できる可能性はあるが、大規模な導入は難しいかもしれないということが実証されていた。今回の研究結果はこれらの先行研究を補完するものだ」と主張。

「今回の研究を発展させ、ゾウの行動を持続可能な方法で受動的に管理するための補助ツールを開発し、現在用いられているアプローチを拡充したい」と述べている。(c)AFP