【7月20日 AFP】(更新)フランスのエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領の警護責任者の一人が、5月1日のメーデー(May Day)のデモの際に参加者を暴行する様子が映った動画が19日までに公開され、物議を醸している。大統領府は20日AFPに対し、この人物の解雇手続きに入ったと明かした。

 仏紙ルモンド(Le Monde)が公開した動画には、パリ中心部で行われたメーデーのデモの際、警察のバイザー付きヘルメットをかぶったアレクサンドル・ベナラ(Alexandre Benalla)容疑者が若い男性を殴り、その後さらに踏みつける場面が映っていた。

 ベナラ容疑者はマクロン大統領が公務で外出する際の身辺警護の責任者。元私設ボディーガードで、警察官ではない。

 パリの検察当局は、暴行と警察官への成り済ましで、ベナラ容疑者の身柄を拘束したと発表。この警察官への成り済ましで有罪が確定すれば、最高1年の禁錮刑と罰金1万5000ユーロ(約196万円)が科される可能性がある。

 大統領府によるとベナラ容疑者は、5月1日は非番で、「警察の活動を見学する」許可を得ていた。ベナラ容疑者はこの一件の後で2週間の停職処分(無給)を受け、マクロン氏の外出時の警護責任者の任を解かれて内勤に異動となっていたという。

「これは容認できない振る舞いを罰するための制裁措置で、解雇に先立つ最終警告だった」と、ブルーノ・ロジェプティ(Bruno Roger-Petit)大統領報道官は説明。

 ジェラール・コロン(Gerard Collomb)内相も、観光客に人気のムフタール通り(Rue Mouffetard)で行われた左派の学生デモにベナラ容疑者が「介入する権利はなかった」と認めた。

 野党は、なぜベナラ容疑者が解雇されず、警察沙汰にもならなかったのかをめぐり、マクロン氏への追及を強めていた。

 また、仏ニュース専門局BFMはベナラ容疑者が今週、サッカーW杯ロシア大会(2018 World Cup)で優勝したフランス代表チームの凱旋パレードが行われた際に警護任務に復帰したと報じており、さらに問題がこじれる恐れもあった。

 大統領府は、本件に絡み「新たな要素」が浮上したことを受けて、ベナラ容疑者解雇の決定を下したと説明している。

 ベナラ容疑者は昨年の仏大統領選でマクロン氏の警護責任者を務め、2017年5月からは大統領のスタッフに起用されていた。マクロン氏にとって、大統領就任以来最も打撃の大きい騒動となっている。(c)AFP