【7月19日 AFP】米アラバマ州で、初出勤の前日に自家用車が故障してしまったという青年が、仕事に遅れまいと30キロ以上歩いて出勤したとして、インターネット上で話題になっている。

　同州ホームウッド（Homewood）在住のウォルター・カー（Walter Carr）さん（20）は、引っ越し業者としての初出勤直前に車が壊れてしまい、他の移動手段を見つけることもできなかった。高校時代にクロスカントリーの選手だったカーさんは、30キロ余りならば徒歩で出勤できると思い、14日の午前0時少し前に自宅を出発して歩き始めた。

　4時間後、一休みしていたカーさんに警官が職務質問。カーさんの実直さに胸を打たれた警官は、カーさんに朝食をおごった上、パトカーで数キロ先まで送った。カーさんがさらに歩いていたところ、最初の警官から連絡を受けた別の警官が、今度は引っ越しの依頼主、ジェニー・ラミー（Jenny Lamey）さんの家まで送り届けた。

　ラミーさん宅の呼び鈴が鳴ったのは朝6時半。「警察官でした。『この好青年』を拾って連れて来ましたと説明を受けました」とラミーさん。ラミーさん夫妻はカーさんに、他のスタッフが到着するまで休めばと促したが、カーさんは仕事の荷造りを即始めると言って聞かなかったという。

　ラミーさんはカーさんとの会話の中で、カーさんが元々ルイジアナ州ニューオーリンズ（New Orleans）の出身で、2005年のハリケーン・カトリーナ（Hurricane Katrina）で家を失い、家族でアラバマ州へ移住したことを知った。

　謙虚で親切、陽気なカーさんに「心からの敬意を覚えた」というラミーさんが、カーさんの話をフェイスブック（Facebook）に投稿したところ、18日までに6000人を超えるユーザーから反応があった。

　この話を聞いた引っ越し会社の社長も、新人のカーさんがアパートを移ったばかりで一文無しだと知り、自分の車をカーさんに贈ることにした。カーさんに車のキーを渡しながら「これは私の車だが、君にあげたい」と申し出ると、カーさんは驚いた表情で「本気ですか？」と聞き返したという。

　さらにラミーさんが、クラウドファンディングサイト「ゴー・ファンド・ミー（GoFundMe）」で「ありがとうウォルター」と称する募金を呼び掛けたところ、18日までに6万ドル（約680万円）以上が集まった。

　地元警察が投稿した動画の中で、明らかに感動した様子のカーさんは感謝の言葉を述べた上で、「あらゆる努力はいつか報われるものですね」と語った。(c)AFP