【7月18日 AFP】木星を周回する衛星が新たに12個発見された。今回の発見で、現在知られている木星の衛星は計79個となり、太陽系の惑星の中で最多となる。天文学者チームが17日、発表した。

 米カーネギー研究所(Carnegie Institution for Science)の天文学者のスコット・シェパード(Scott Sheppard)氏は、新発見の衛星の一つを「真の変わり種」と表現した。この衛星は直径が約1キロしかなく、極めて小型の天体だ。

 この衛星について同氏は、「その他の既知の木星の衛星とはまったく異なる軌道を持って」おり、「現在知られている木星の衛星の中で最小である可能性が高い」と述べた。

 この不規則衛星が木星を1周するのにかかる時間(公転周期)は約1年半で、木星の自転とは逆の方向に逆行公転する衛星群の軌道を、傾斜した軌道で横切るという。

 シェパード氏は、この状況を「不安定」と指摘しており、「正面衝突が起きれば、これらの天体は直ちに粉々に砕けて塵(ちり)と化してしまうだろう」と説明した。

 新発見の衛星のうち、木星に近い軌道を周回する内側の衛星群は公転周期が約1年であるのに対し、木星から離れた外側の衛星群はその倍の長さの公転周期を持つ。今回の発見では、この「変わり種」の他にも2個の順行衛星が見つかっている。

 これらの衛星はすべて、より大型の母天体が衝突して分裂した破片であると考えられるという。

 不規則衛星の名前については、ローマ神話の神ジュピター(Jupiter、木星の英語名)のひ孫娘に当たる、健康と衛生を司る女神の名を取って「Valetudo」と命名するよう提案された。

 イタリア人天文学者ガリレオ・ガリレイ(Galileo Galilei)は1610年、木星の衛星の最初の4個を発見した。

 実は、今回の発見は偶然の産物だった。天文学者チームは、木星の新衛星発見を目指してはおらず、冥王星より遠くにある惑星を探すために全天を走査観測していたところ、木星の衛星が望遠鏡の走査経路に偶然入ったのだという。

 新衛星群は当初、南米チリにあり米国立光学天文台(NOAO)が運用する望遠鏡を用いて2017年に発見された。その後、米国やチリにある一連の他の望遠鏡を用いて新衛星群の軌道を確認するのに1年を要した。(c)AFP