北朝鮮の金委員長、現地視察の先々で責任者を叱責 その狙いは?
このニュースをシェア
【7月17日 AFP】北朝鮮の国営メディアは17日、金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)朝鮮労働党委員長が咸鏡北道(North Hamgyong Province)の工場や発電所、リゾート施設を視察した際に担当者らを厳しく叱責したと伝えた。金委員長が現地指導先で当局者を叱咤(しった)することは珍しくないが、これほど強い文言で大々的に叱り付けるのはまれだ。
頻繁に各地を視察して熱心にメモをとる当局者らを「現地指導」する金委員長の姿は、北朝鮮国営メディアにとって報道の要となっている。そうした中、朝鮮労働党の機関紙「労働新聞(Rodong Sinmun)」は17日の紙面を12ページに倍増。うち9ページを咸鏡北道を視察する金委員長の記事に充てた。
国営朝鮮中央通信(KCNA)によると、金委員長は漁郎川発電所(Orangchon Power Station)を視察した際、建設の遅れから70%しか完成していない状況に、あきれ果てて「言葉も出ない」と激怒。さらに、責任者の政権幹部らを、事業の遂行を咸鏡北道当局に任せきりにして監督を怠ったと叱責し、来年10月までに完成させるよう命じた。
また、故金日成(キム・イルソン、Kim Il-Sung)国家主席や故金正日(キム・ジョンイル、Kim Jong-Il)総書記も訪れたことがある温泉で有名なオンポ保養所(Onpho Holiday Camp)では、汚れた浴槽を見て「魚用の水槽よりひどい」と怒りをあらわにしたという。
韓国ソウルにある北韓大学院大学(University of North Korean Studies)の梁茂進(ヤン・ムジン、Yang Moo-Jin)教授はAFPの取材に、金委員長は先月シンガポールで開かれた米朝首脳会談を受けて、北朝鮮が経済発展に注力しているという合図を国内外に発信しようとしているのだろうと説明。「国内には国民の暮らしを気遣う指導者というイメージを印象付け、国外には非核化の約束に真剣に取り組んでいるというシグナルを送っているのだ」と語った。(c)AFP