古代ローマ人も捕鯨をしていた? 地中海で骨発見 定説に一石
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【7月10日 AFP】古代ローマ人は商業捕鯨をしていたかもしれない──。人類初の大規模な捕鯨は11世紀ごろにイベリア半島近辺のバスク(Basque)人が始めたとする定説に一石を投じる論文を、欧州の研究者らが11日、英学術誌「英国王立協会紀要(Proceedings of the Royal Society B)」に発表した。地中海にセミクジラとコククジラがいなくなったのはローマ人による捕鯨活動の結果と示唆する骨が発掘された
論文によると、セミクジラとコククジラの骨が、これまで生息が想定されていなかった欧州とアフリカを隔てるジブラルタル海峡(Strait of Gibraltar)近くにある古代ローマの魚の塩漬け場の跡から見つかった。この発見は、2000年前にはセミクジラとコククジラが北大西洋の「どこにでもいた」ことや、ジブラルタル海峡を通って温暖な地中海に回遊し、出産していた可能性を示すものだ。
研究チームは論文の中で「これらの(クジラ)2種がローマ帝国沿岸に生息していた証拠により、ローマ人が忘れられた捕鯨産業の基礎を形成していたかもしれないとする仮説が浮かび上がる」と指摘している。
論文の共同執筆者の一人であるフランス国立科学研究センター(CNRS)のアナ・ロドリゲス(Ana Rodrigues)氏はAFPに「ローマ人はこれら2種類のクジラを、1000年後にバスク人が行ったのと同様のやり方で捕えていた可能性がある。小型の手こぎ船で(海岸沿いを泳ぐ傾向がある)クジラに接近し、銛(もり)を打ち込み、やりでとどめを刺してから陸に運ぶというやり方だ」と述べた。
骨の発見は古代ローマに捕鯨産業が存在したことを証明するものではないが、そのように解釈することで、バスク人が捕鯨を始める前から大西洋のコククジラの生息数が大幅に減っていたとする、これまでの研究結果の説明がつくという。
研究チームは今回の研究成果について、ローマに忘れられた捕鯨産業が存在したという仮説の生態学的な根拠となるとしている。(c)AFP