【7月11日 AFP】世界最古の生物由来の色素をアフリカ・サハラ砂漠(Sahara Desert)で発見したとの研究結果を、オーストラリアの研究チームが9日、発表した。複雑な生命体が地球上に出現したのがほんの6億年前である理由を説明する助けになる発見だという。

 シアノバクテリア(藍色細菌)と呼ばれる単細胞微生物が11億年以上前に生成したこのピンク色の色素は、これまで発見されていた色素より約5億年古い。

 研究を率いたオーストラリア国立大学(Australian National University)のヨッヘン・ブロックス(Jochen Brocks)氏によると、この色素サンプルは、大型肉食恐竜ティラノサウルス・レックス(T・レックス、Tyrannosaurus rex)が生息していた白亜紀後期のさらに「15倍ほど古い」時代のものになるという。

 地球の誕生は約45億年前で、より複雑な形態の動植物が6億年前にようやく出現した理由の解明に今回の最新の発見が役立つと、研究チームは指摘している。

 過去の研究では、大気中の酸素濃度が低かったことで、複雑な生命体の進化が抑制されたとする説が提唱されていた。だが、11億年以上前に生息していたシアノバクテリアに関する今回の発見は、この単細胞微生物が当時の海洋内で大多数の優勢を占めており、より豊富な食料源となる藻類などがほとんど存在していなかったことを示唆している。

 ブロックス氏は、AFPの取材に「藻類は、それでも微小だが、シアノバクテリアと比較すると体積が1000倍で、はるかに豊富な食料源となる」と述べ、また「シアノバクテリアが優勢だったのは約6億5000万年前までで、その減少と共に藻類が急速に分布を拡大し始めた。これが、より複雑な生態系の進化に不可欠なエネルギーの爆発的な増加をもたらした。これにより、人間を含む大型の動物が地球上で繁栄することができた」と説明した。

 研究チームは今回の色素サンプルを、西アフリカのタウデニ盆地(Taoudeni Basin)で掘削作業を行っていた石油会社から分析のために送られてきた岩石の中から偶然発見した。

 この色素は、クロロフィル(葉緑素)の化石化した残存物だ。クロロフィルは植物や一部の微生物が光をエネルギーに変換することを可能にする化学物質。研究チームによると、今回発見されたピンク色の色素は当初、青緑色に見えたと考えられるという。

 今回の研究結果は、米科学アカデミー紀要(PNAS)に発表された。(c)AFP