【7月10日 AFP】米紙が8日、世界保健機関(WHO)の母乳育児推進決議案を米国が阻止しようとしたと報じたことを受け、ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領は翌9日、これに反発し、女性が粉ミルクを使う権利を擁護した。

 ニューヨーク・タイムズ(New York Times)によると、先日行われたWHO会合に出席した米代表団が、乳児の栄養に関する決議案から、加盟国に母乳育児の「保護および促進、支援」を促す文言を削除しようとする働き掛けを行ったという。

 米国はエクアドルに対し、この文言に賛同しないよう圧力をかけ、経済制裁と軍事支援の削減をちらつかせた。ただその後ロシアが決議案の可決に向けて介入し、決議案の文言はほぼ原案通り維持されたと、同紙は報じている。

 その上で、これは米政府が粉ミルクメーカー側に同調する立場を示したもので、公衆衛生および環境問題でトランプ政権が企業利益を優先しようとする一例だと指摘した。

 これにトランプ大統領が反発。「きょうのニューヨーク・タイムズの母乳育児に関するフェイクニュースは非難されるべきだ」「米国は母乳育児を強く支持するが、女性の粉ミルクを使用する権利が否定されるべきだとは思わない。栄養不良や貧困により、多くの女性がこの選択肢を必要としている」と投稿した。

 WHOは長年、6か月までは母乳のみで育て、2歳まで、またはそれ以降も補完的に母乳を与えることを推奨してきた。

 とはいえ世界には巨大な粉ミルク市場が存在する。市場調査会社「ユーロモニター・インターナショナル(Euromonitor International)」によると、その規模は2015年で470億ドル(約5兆2300億円)に上り、主に新興国でその成長が著しい。この市場を一握りグループが独占しており、うち数社が米企業だとされる。(c)AFP