日本の漫画が火付け役? フランスの新たな快楽、ワインコミック
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【8月4日 AFP】フランス人がワインを愛していることは誰でも知っている。そしてフランスは、日本に次ぐ世界第2位の漫画大国でもある。今、この二つの情熱を掛け合わせた新たな文芸が、フランスでブームを巻き起こしている。
それは、ワインが主役の大人向けコミックだ。10年あまり前にはまったく耳にすることのなかったジャンルだが、いまや書店の棚をにぎわし、南仏ボルドー(Bordeaux)周辺のワイン農園で関連イベントが開かれるほどだ。
「BD & Vin(漫画とワイン)」と呼ばれる新ジャンルの火付け役は、ワイン醸造家のロマン・スー(Romain Sou)氏。有名なシャトー・マルゴー(Chateau Margaux)の真向い、ジロンド(Gironde)川の河口に、醸造所シャトー・ラクチュール(Chateau Lacouture)を営んでいる。
「私は漫画が好きだし、ワインも好きだ。友人の多くもそうだ」とスー氏は語る。「だが、10年前に私たちが始めたときには、ワインに関するBDを切望するファンがいるかどうかなんて、まるで分からなかった」
皮肉にも、フランス人にワインに関する漫画の可能性を気付かせたのは、日本の漫画「神の雫(Drops of God)」 の成功だった。ビール会社に勤める青年が、父親の遺産であるワインコレクションを受け継ぐため遺言に記された12本のワインとその上に立つ1本のワインを当てるというストーリーは、それまであまり知られていなかった複数のフランスの醸造所を一夜にしてアジアのスターに押し上げたのだ。
この漫画のおかげで光が当たったワイン銘柄もある。たとえば台湾のある輸入業者は、ボルドーのシャトー・モン・ペラ(Chateau Mont-Perat)を2日間で50ケース売りさばいた。
ワインレビュー誌「デキャンタ(Decanter)」は「神の雫」について、「おそらく過去20年間で最も影響力の強いワイン関連の出版物」と評し、原作者の樹林伸(Shin Kibayashi)氏と姉の樹林ゆう子(Yuko Kibayashi)氏を「テイストセッター」(食のトレンドの仕掛け人)と呼んだ。