エベレストで横行する「不必要な救助」、ヘリ利用で保険金搾取
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【7月14日 AFP】ネパールのヒマラヤ山脈で働く登山ガイドらは、訪れる登山客らに「問題の兆し」があるのを見つけると、すぐにヘリコプターを利用して下山するよう強く勧める──。その背景にあるのは、高額となるヘリコプターでの「不必要な救助」によって大金を手にすることを狙った関係業者とガイドたちとの癒着がある。内情に詳しい関係者らが話した。
今回、AFPの取材で分かったのは、1回のヘリコプターの利用に対して複数回分の請求が行われていたり、若干の体調不良でも登山客らにヘリコプターを利用するよう半ば強制したりする業者が複数存在していることだ。このような手口を通じて、数万ドル(数百万円)が保険会社から不正に支払われているという。
こうした行為に加担するガイドらには、登山客がヘリコプターを使って下山するたびにリベートが支払われる。疲れの見える登山客らにヘリコプターの利用を勧め、その一方で保険会社に対しては、それが救助目的であったと申請するという。
こうしたケースは数多く見られ、たとえ登山客に何ら問題がない様子でも、ヘリコプターのパイロットはそれが「救助」であると報告するのだ。
英国に本拠を置く「トラベラー・アシスト(Traveller Assist)」は、世界の旅行保険会社の代理で医療救助を行っている。同社のジョナサン・バンクロフト(Jonathan Bancroft)氏は、「これは詐欺に等しい金儲けで、ネパール全体で大規模に行われている」と語る。
トレッキング関連のサービスを提供する旅行会社は、トレッキングそのものよりも、登山客をヘリコプターで下山させることによって発生する見返りを通じて、より多くの金銭を得ている。こうした現状は、同国最大の観光の目玉であるヒマラヤ山脈での救助要請の急激な増加にも影響を与えている。
トラベラー・アシストによると、ネパールへの旅行者をカバーする旅行保険会社は2017年、ヘリコプター救助が驚異的な件数に上ったことから過去最大の支払額を計上した。さらに今年は、それをさらに上回るペースとなっているという。
ネパールではヘリコプターの運用を監視する中央管理センターが存在しないため、このような「下山」目的の利用がどれだけあるのかを正確に把握することは難しい。
しかし過去6年間、エベレスト周辺の上空はヘリコプターの航路と化しており、業界のデータによると、その数は約6倍に増えたという。各機体の年間飛行時間は1000時間を超えるとされる。
地域の小さな診療所で働いているタニシュワル・バンダリさんは、「以前はだいたい2、3日に1機しかヘリコプターを見かけなかったが、今は1日に10機ほど見る」と話す。
他方で、匿名を条件にAFPの取材に応じたある外国人操縦士は、登山シーズンがピークを迎える4月と5月、今年はほぼ毎日登山客を救助したと述べたが、「シーズン全体を通して本当に体調が悪そうだったのは3人くらいだと思う」と明かした。