【7月5日 AFP】絶滅危惧種キタシロサイのDNAを持つ胚の培養に成功したと、科学者チームが4日、発表した。シロサイの亜種であるキタシロサイは、数か月前に地球上で最後の雄「スーダン(Sudan)」が死んだばかりで、チームはこの亜種を絶滅から救うことを目指している。

 現存すると考えられているキタシロサイは雌の2頭のみで、繁殖が不可能となっている。そのため、新たに開発されたこの画期的な技術には、キタシロサイの繁殖個体群の再建につながることへの期待が寄せられている。

 独ライプニッツ野生動物研究所(Leibniz Institute for Zoo and Wildlife Research)の繁殖管理部門を統括するトマス・ヒルデブラント(Thomas Hildebrandt)氏は今回の研究について、「目標は3年以内に初のキタシロサイの子を誕生させることだ」と記者団に語り、「妊娠期間が16か月であることを考えると、今後1年あまりで胚の着床を成功させる必要がある」ことを説明した。

 最近特許を取得した大きさ2メートルの卵子採取機器を用いたチームの研究は、史上初となる人工的に作製したサイの胚をもたらした。現在は凍結された状態のこれらの胚は「代理母に移植すれば妊娠が成立する可能性が非常に高い」と、ヒルデブラント氏は述べている。

 この胚は、死んだキタシロサイの雄から採取した凍結精子と、ミナミシロサイの雌の卵子を使って作製したハイブリッド胚だ。ミナミシロサイは世界で数千頭が残存している。ミナミシロサイの卵子は欧州の動物園で飼育されている個体から採取した。

 チームは、地球上で最後のキタシロサイの2頭であるナジン(Najin)とファトゥ(Fatu)から卵子を採取するのに、今回の技術が利用できないか模索している。スーダンの娘と孫娘に当たる2頭はケニアの国立公園で暮らしている。

 チームの計画は、この2頭から採取した卵子をキタシロサイの精子で受精させ、受精卵をミナミシロサイの雌の代理母に移植することで、新生のキタシロサイ個体群を新たに作ることだ。