コアラのゲノム解読、保護への応用に期待
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【7月3日 AFP】オーストラリアの象徴的な動物であるコアラのゲノム(全遺伝情報)を解読したとする研究論文が2日、発表された。病気や山火事、車との衝突や野犬など、さまざまなリスクからその存在が脅かされているコアラを、より明るい未来に向かわせる研究結果だという。
7か国50人以上の研究者からなるチームが取り組んだ今回の大規模研究では、コアラの遺伝子2万6558個を解析。性感染症のクラミジアなど、病気に対するワクチン開発に不可欠なDNAの手がかりをもたらした。コアラのクラミジアは発症すると失明や不妊の原因になる。
米科学誌ネイチャー・ジェネティクス(Nature Genetics)に掲載された論文の共同執筆者で、オーストラリア博物館の研究施設「Australian Museum Research Institute」に所属のレベッカ・ジョンソン(Rebecca Johnson)氏は、「今回のゲノム解析により、コアラの免疫遺伝子の詳細な理解が初めて可能となった」「これらの遺伝子は、コアラのためのワクチン開発に直接的に寄与するものだ」とAFPの取材に語った。
他方で、今回のDNAコードの解読から期待できるのは、コアラ繁殖計画への後押しだ。
研究では、豪ビクトリア(Victoria)州とサウスオーストラリア(South Australia)州に生息するコアラ個体群の方が、豪クイーンズランド(Queensland)州と豪ニューサウスウェールズ(New South Wales)州の亜種個体群よりも近親交配度が高いことが明らかになった。
この発見により「遺伝的多様性が高い個体群を保存する方法や、同系交配の個体群の多様性向上に向けて、動物をどのように移動させることが最良となるかなど、いくつかの提言を行うことが可能になる」と、ジョンソン氏は指摘する。
コアラは野生に残存する可能性のある個体数がわずか4万3000頭とされ、その保護状況については、国際自然保護連合(IUCN)の「危急種(Vulnerable)」に指定されている。