ウクライナで少数民族ロマに対する襲撃事件が多発、憎悪犯罪か
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【7月2日 AFP】血で染まった服や靴、子どものおもちゃが古びたテントの中で散乱している。ウクライナ西部の森の中にある少数民族ロマのキャンプで先月、男性(24)が襲撃され殺害された。
同国西部リビウ(Lviv)郊外で6月23日夜、ロマのキャンプにいた十数人が棒やナイフで武装した暴行犯10人に襲われ、テントから逃げ出さざるを得なくなった。
当局によると、この襲撃により男性1人が死亡、子ども1人を含む4人が負傷した。死亡した男性は体を数か所刺されたという。
ウクライナではここ数か月、国内にいる26万人あまりのロマ人に対する残忍な襲撃が相次いでおり、今回初めて死者が出る事態となった。首都キエフとリビウでは4月以降、ロマ人の集落に対する襲撃に関する通報が6回あったという。
今回の襲撃で負傷した人々はリビウ当局の一時収容施設に身を寄せており、記者からの取材を拒否している。しかし、地元のロマ人コミュニティーを支援する聖職者の協力により、AFPの記者がリビウ市内の反対側の森で隠れて暮らすロマ人の別のキャンプを取材できた。
大家族4世帯が生活するこのキャンプの男性メンバーの1人、ミシャ(Misha)さん(34)によると、ここも5月初めに襲われたという。
黒髪で痩せたミシャさんは、「最初、犯人は石を投げ付けてきた。そして棒を持って襲ってきた。全員を襲い、子どもたちまで殴った」と語った。
また、8人の子を持つクララ(Klara)さん(39)は子どもに授乳しながら目に涙を浮かべ、「犯人は私たちのキャンプを焼いた。子どもたちはネズミのように茂みの中に隠れた」と述べた。テント暮らしのロマ人たちは襲撃を未然に防ぐため、キャンプの位置を何度も変えていたという。
クララさんは「また襲われることがとても怖い。ここにとどまることができるかも分からない」と訴えた。
■極右団体か
ロマの人々は襲撃増加の理由を必死で明らかにしようとしているが、警察や人権団体は極右団体の存在を指摘している。
別のロマ人の女性(55)は、「私たちは盗みをしていると責められている。でも何も盗んでいない。私たちは盗みをした者をキャンプから追い出している」と語った。
今回の襲撃事件後、警察は16歳と17歳の容疑者7人と、犯行を計画したとされる20歳の容疑者1人の計8人を拘束している。(c)AFP/Vasyl Trukhan with Oleksandr Savochenko in Kiev