憲法から「人種」の文言削除、性の平等明記へ 仏下院で合意
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【6月28日 AFP】フランス国民議会下院は27日、共和国憲法第1条から「人種」の文言を削除し、性差別の禁止を盛り込む改正案に合意した。
制定されて60年になる現行の憲法第1条は、「出生、人種、または宗教による差別なしに」全ての市民に対し法の下の平等を保障している。しかし、「人種」などというものはないと主張する超党派の下院議員らは、この文言を条文から削除することで一致した。
第1条の改正案には、代わりに「社会的性別(ジェンダー)」の文言を追加し、「社会的性別、出生、または宗教による差別なしに」全ての市民に対し法の下の平等を保障すると明記されている。
「人種」の文言がフランスの憲法に追加されたのは1946年、第2次世界大戦(World War II)後初となる改憲のときだ。ナチス・ドイツ(Nazis)とナチスに協力的だった占領下の仏ビシー(Vichy)政権が宣伝し広めた人種差別的思想を、もはやフランスは容認しないとのメッセージを発信するためだった。
第5共和政に移行した1958年の改憲でも、「人種」の文言は残された。だが、近年になってカリブ海とインド洋のフランス海外県や特別自治体から選出された議員たちが文言の削除を強く求めていた。
米国や英国では一般的に用いられる「人種」という言葉は、フランスやドイツをはじめとする欧州諸国では特に慎重な扱いが求められる。フランスではフランソワ・オランド(Francois Hollande)前大統領が2012年の選挙戦で、歴史書から「人種」という言葉を追放すると公約し、「異なる人種など存在しない」「(フランス)共和国に(人種という言葉の)存在する余地はない」と述べていた。(c)AFP