レイプ被害者支援専門医、ヤジディー教徒の精神的指導者との対話
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【6月28日 AFP】イラクの少数派、ヤジディー(Yazidi)教徒の聖地、北部ニナワ(Nineveh)のラリッシュ(Lalish)。地上から天国への旅を象徴する円すい形の屋根をもつ寺院に、その精神的指導者フルト・ハッジ・イスマイル(Khurto Hajji Ismail)師を表敬訪問した医師がいた。
イスマイル師と握手を交わしたのは、コンゴ民主共和国から来た著名な婦人科医、デニ・ムクウェゲ(Denis Mukwege) 医師(63)だ。
ヤジディー教は古代宗教の一つで、イラク北部に50万人以上の信者がいる。だが2014年、ヤジディー教徒の女性や少女数千人が、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」に性奴隷として誘拐された。イスマイル師は先ごろ、レイプの被害者となった女性たちに汚名を着せてはならないと宣言したばかりだった。
寺院への訪問の直前、ムクウェゲ医師はAFPに「多くのコミュニティーで、女性たちはレイプされた途端に汚名を着せられ、排除されている」と語り、「だが、イスマイル師は、私たちは皆人間であり、(苦難にさらされた)女性が汚名を着せられることがあってはならないとしている」と続けた。
ヤジディー教徒の女性たちが性奴隷とされた悲劇について、ムクウェゲ医師は特に語ることができる立場にある。彼は祖国・コンゴ民主共和国東部の南キブ(South Kivu)州で運営する病院で、何万人という女性たちを治療してきた。患者の女性たちは、1998~2003年のコンゴ内戦とそれに続いた戦闘で「戦争兵器」として使われた大規模な集団レイプの被害者たちだ。
ムクウェゲ医師いわく、ヤジディー教徒の女性たちはイスマイル師の姿勢のおかげで「沈黙」を破り、証言することができる。「この経験を共有する方法があると思う…私たちの力を結集して、戦争兵器としてのレイプに立ち向かう方法が」と言う。