【6月26日 AFP】旧人類ネアンデルタール(Neanderthal)人は、集団的狩猟の緻密な戦略を駆使できたことが、ドイツで見つかった先史時代の動物の骨の分析で分かったとの研究結果が発表された。ネアンデルタール人につきまとう粗野な野蛮人というイメージとは正反対の結果だという。

 米科学誌「ネイチャー・エコロジー・アンド・エボリューション(Nature Ecology and Evolution)」に発表された論文によると、12万年前のシカ2頭の骨に残された傷の痕跡が、獲物に忍び寄って殺すために武器が使われたことを示す最古の「決定的」証拠を提供しているという。

 今回の研究では、顕微鏡撮像技術と打撃の衝撃を調べる再現実験により、少なくとも1つの打撃痕が低速で動く木製のやりで刻まれたものであることが確認された。

 独ヨハネス・グーテンベルク大学(Johannes Gutenberg University)の研究者ザビーネ・ゴージンスキ・ウィンドヒューザー(Sabine Gaudzinski-Windheuser)氏は、「今回の結果は、ネアンデルタール人が動物のすぐ近くまで接近し、やりを投げるのではなく、動物に突き刺したことを示唆している」とAFPの取材に説明。「このように対決的な方法で狩猟を行うには、綿密な計画と慎重に身を隠す行動、そして狩りに参加する人々の間の密接な協力関係が不可欠だった」と続けた。

 約30万年前から欧州に住んでいたと考えられているネアンデルタール人は、3万年前に絶滅。現生人類に取って代わられた。

 ホミニン(ヒト族。類人猿を除く現生種と絶滅種の人類を表す用語)が武器を用いた狩りを始めたのは、50万年以上前だった可能性が最も高い。英国とドイツで発見された30万~40万年前の木製の棒は、知られている中で最古のやりに似た道具で、獲物を殺すために使われたと考えられている。だが、この棒がどのように使われていたかに関する物的証拠はなく、科学者らの議論は推測の域を出ないままだった。