【6月26日 AFP】オランダ・エールディビジの強豪アヤックス(Ajax)の最高経営責任者(CEO)を務めるエドウィン・ファン・デル・サール(Edwin van der Sar)氏は25日、昨年の練習試合中に倒れて脳に永久的な損傷を負ったアブドゥルハーク・ヌーリ(Abdelhak Nouri)に対する全責任を認めた。

 現役時代はイングランド・プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッド(Manchester United)でスター選手だったファン・デル・サール氏は記者会見で、「新たな情報により、われわれは新たな結論に到達した。オーストリアでアブドゥルハークが倒れたときの処置は十分ではなかった。従って、われわれは起きてしまった結果に対する責任を受け入れる」と述べると、ヌーリの家族に対して感情をあらわにしながら深く謝罪した。

 ファンからはアピー(Appie)の愛称で親しまれた21歳のヌーリは、昨年7月にオーストリアで行われたドイツ・ブンデスリーガ1部のヴェルダー・ブレーメン(Werder Bremen)との試合中、不整脈により突然ピッチに崩れ落ちた。そして、同国インスブルック(Innsbruck)の病院に搬送されて集中治療を受けた後、オランダ・アムスデルダムの医療施設に転院したものの、脳に永久的かつ重度の損傷を負ってしまった。

 ファン・デル・サール氏は当初、7歳でアヤックスに入団して若手有望株の一人として期待されていたヌーリが、フィールドで最大限の処置を受けていたとクラブ側は確信していたと話していたが、同選手の家族が生涯にわたる介護に必要な損害賠償を求める裁判を起こしたことを受け、最近になって第三者に意見を求めていた。そして、別の心臓専門医が調べた結果、ヌーリは心拍に十分な注意を払われておらず、医療スタッフは気道を確保することに集中していた事実が判明し、「大きな衝撃」を受けたと明かした。

 同氏はまた、「もっと早く除細動器を使用して容体を改善するべきだった」ことも示されたとして、アヤックスが「人として、仲間として、そしてアピーの友人として」若きヌーリへの責任を負うことを涙ながらに話した。さらには、フィールドで倒れた選手への処置方法に関して、アマチュアクラブのチーム医師を訓練する研修会を立ち上げる計画も明らかにし、「われわれには、アブドゥルハークとその家族、わがチーム、そしてオランダのサッカー選手全員に対する義務がある」と述べた。

 ヌーリの家族は今月はじめ、オランダサッカー協会(KNVB)の仲裁委員会に「実質的な損害賠償」を求めて訴訟を起こした。オランダ通信(ANP)は今月4日、ヌーリ家の代理人の話として、同選手が「二度と普通の生活には戻れず、介護と治療に頼ることになる。彼は二度と仕事することはできない」と伝えていた。(c)AFP