【6月30日 AFP】英国は何世紀にもわたって飲酒を楽しむ文化を育んできた。だが、1月の禁酒月間「ドライ・ジャニュアリー（Dry January）」のような活動が示すように、体形に気を使いアルコールを控える人の数が史上最多を記録するに至って、酒類業界もこの流れを捉え始めた。

「以前よりもよく眠れるし、気分も最高だ。エネルギーに満ちている」。47歳のスチュアート・エルキントンさんは言う。7年前にパートナーと子どもを持とうとし、断酒を決めた。

　英国家統計局（Office for National Statistics）が2017年に行った調査では、回答者7100人のうち前週飲酒をしたと答えた人は57％だった。64％だった2005年の調査開始以来、最低の水準となった。

　一方、アルコールを一滴も飲まないと答えた人は2005年が18.8％、2017年は20％強だった。上昇傾向は特に25～44歳に顕著で、2005年から5ポイント増の20.6％だった。

　エルキントンさんは2016年、ノンアルコールまたは低アルコールのビール、ワイン、スパークリングワインなどを販売するオンラインショップ「ドライ・ドリンカー（Dry Drinker）」を立ち上げた。販売しているドリンクの種類は急速に増え、現在では100種類以上を取り扱っている。

「子どもや家族がいたり、忙しい生活を送ったりしていると、二日酔いで時間を無駄にしたくない。素晴らしいビールを堪能し、マイナス面がない。この二つを同時に実現したかった」と、エルキントンさんは語った。「アルコールの味がするが、アルコールは含まれていない」製品の需要の増加に支えられ、売り上げは急激に伸びているという。

「ドライ・ジャニュアリー」の活動が広まっていることも、ノンアルコールの流れを後押ししている。ドライ・ジャニュアリーは、お酒を普段よりも飲んでしまうホリデーシーズンの次の月に、1か月間お酒を断つというキャンペーン。この活動を主催する団体「アルコール・コンサーン（Alcohol Concern）」によると、昨年は500万人の英国人がドライ・ジャニュアリーに参加したという。

　酒類業界と大規模小売業界は拡大するノンアルコール市場に急いで参入しようとしている。

　最近、数種類のノンアルコールビールが英国で販売開始された。世界最大の酒類メーカー、ベルギーのアンハイザー・ブッシュ・インベブ（AB Inbev）のビールもこのうちの一つだ。同社では2025年までにノンアルコールまたは低アルコールビールが、ビール全体の売上高の5分の1を占めると予想している。

　英スーパーマーケット大手テスコ（Tesco）は最近、アルコール度数0.5％未満のワインシリーズの販売を開始した。このワインは「香り、質、風味が損なわれないように徐々にアルコールを取り除く」技術を用い、通常のワインと「ほとんど区別がつかない」という。

　8月に開催される英最大規模のビールの祭典「グレート・ブリティッシュ・ビア・フェスティバル（Great British Beer Festival）」は毎年、会場となるロンドンの展示会用施設を世界最大のパブに変える。だが、時代の流れには逆らえない。今年はこの祭典でも史上初めて、ノンアルコールビールを提供する予定だ。(c)AFP/ Martine PAUWELS