高地で育つ人の前腕は短い、その仕組みは謎 ヒマラヤ研究
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■進化ではない
ペイン氏は「人体は成長のために利用できるエネルギーが限られている場合、どの部分が成長するかの優先順位を決める」と指摘する。「手先を器用に動かすためには十分な手の成長が不可欠だし、腕力を得るためには上腕の長さは特に重要だ」と同氏。だが、前腕が短いことは、人間にとって許容できることのようだ。
ペイン氏とネパールおよびカナダの研究者チームは、エベレスト・トレイル(Everest Trail)のナムチェ・バザール(Namche Bazaar)まで、高山病の辛さを越える目に遭いつつ、ヤクに科学機材を運ばせて山道を2日にわたり歩いた。
ペイン氏は、この現象に進化は関与していないと考えている。むしろ、アンデスやヒマラヤのような大気が希薄な環境下に生まれる人々の身体は、おそらく胎児の段階からリアルタイムに反応し適応しているのだと指摘する。
だが、結果として前腕が短くなる正確な生物学的仕組みについては、謎のままだ。ペイン氏は「成長過程中の体温の変化や前腕に流れる血流の変化、あるいは手足の部分間の栄養配分の差に関連があるかもしれない」としている。(c)AFP/Marlowe HOOD