世界の自殺率急増に警鐘、「HIV並みの予防策を」
このニュースをシェア
【6月15日 AFP】米国のファッションデザイナー、ケイト・スペード(Kate Spade)さん(55)と人気シェフのアンソニー・ボーデイン(Anthony Bourdain)さん(61)の最近の相次ぐ死は、世界で急増する自殺とこの問題への取り組みの重要性を浮き彫りにしている。
世界保健機関(WHO)によると、世界の自殺件数は年間80万件を超え、15~29歳の年齢層で2番目に多い死因となっている。米国では2016年に4万5000人が自らの命を絶ったが、この数字は1999年と比較して30%近く増加している。
米ピッツバーグ大学(University of Pittsburgh)のデビッド・ブレント(David Brent)教授(精神医学)は「説明は難しいが、その原因の一部にはオピオイド系薬物のまん延に加え、他の先進国と比べて打撃の大きい経済的要因があるかもしれない。なぜなら、わが国には大半の欧州諸国にあるような包括的かつ保護的な保健・社会セーフティーネットがないからだ」
臨床精神医学のリチャード・フリードマン(Richard Friedman)教授は米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)の論説で、「自殺の流行は過去、時代で変動してきた経緯があり、しばしば増加するのは社会の混乱期だ」とし、大恐慌の1932年をその例に挙げている。「本当に問うべきは、われわれの社会は自殺という公衆衛生危機の取り組みにおいて、何故ほとんど進歩がないのかだ」と同教授。「実際、10万人当たり13.7人という昨年の自殺率は、100年前の自殺率とほぼ同じだ」
フリードマン氏は自殺に対し、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)や心臓病のような公衆衛生の脅威に対するものと同様の取り組みをすべきだと述べ、そのために必要な研究費や臨床治療費を拠出すべきだと主張する。