【6月14日 AFP】南極では1992年以降、3兆トンに及ぶ膨大な量の氷が消失したとする画期的な研究結果が13日、発表された。地球温暖化の進行に歯止めがかからなければ、南極大陸の氷によって地球の海岸線が一変する可能性があることを、今回の結果は示唆しているという。

 科学者84人からなる国際研究チームが英科学誌ネイチャー(Nature)に発表した論文によると、氷の消失の5分の2は最近5年間に発生したもので、厚さ数キロの南極氷床の消失速度がこの間に3倍に加速したという。

 今回の研究結果により、南極大陸の氷塊が減少傾向にあることへの根強い疑念が完全に払拭(ふっしょく)されるはずだと、論文の執筆者らは主張している。

 さらに、数億人が暮らす沿岸地域の低地に位置する都市や町が、地域の存亡に関わる脅威に直面していることが、今回の結果で浮き彫りになった。

 論文の主執筆者の一人で、米航空宇宙局(NASA)のジェット推進研究所(JPL)の科学者のエリック・リグノット(Eric Rignot)氏は「今回の研究により、南極で現在起きていることの明確な状況を把握できた」と語る。同氏は地球の氷床の追跡調査を20年にわたり続けてきた。

 科学者らはこれまで、降雪によって蓄積される氷の量が、融解水や氷河流動の海への流出による氷の消失量を上回るかどうかの判定に取り組んできたが、明確な答えは得られていなかった。

 だが、今回の最新研究では、独立した24の宇宙ベースの調査から収集した衛星データ20年以上分を用いることで、より詳細な全体像を把握することについに成功した。

 米国本土の約2倍の面積を持つ南極大陸は、世界の海を60メートル近く上昇させるのに十分な量の氷に覆われている。

 南極の氷の90%以上は、東南極地域にある。気候変動によって地球の平均表面温度が1度上昇した中でも、東南極の氷はほぼ安定した状態を保ってきた。