公海での漁業は「巨額助成金」頼み、日本など5か国が市場を寡占
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【6月8日 AFP】公海で行われる漁業は、そのままでは採算の合わない事業が各国政府の巨額の助成金によって存続しているとする研究結果を7日、国際チームが米科学誌「サイエンス・アドバンシズ(Science Advances)」に発表した。
いずれの国の領海でも排他的経済水域でもない公海での漁業は、マグロなどの漁業資源の乱獲や、底引き網を使うことによる混獲が問題視され、しばしば「破壊的漁業」と呼ばれる。混獲されることの多い回遊性のサメは、うち44%に絶滅の恐れが指摘されている。
今回の研究では、新たな衛星技術を用いて漁船を追跡し、遠洋漁業の規模をより明確に示すことが可能になった。公海は地球上を覆う海面の64%を占めるが、公海漁業を行っている国や地域はごく少数に限られると研究チームは指摘している。
データが完全にそろっている直近の年は2014年で、年間の公海漁業にかかった総費用は推計62億~80億ドル(約6800億~8800億円)だった。これに対し、漁獲高440万トンの収益の合計は推計76億ドル(約8300億円)だった。
つまり、助成金がなかった場合、公海漁業の収支は3億6400万ドル(約400億円)の赤字から、最大でも14億ドル(約1500億円)の黒字となる。一方、この年に各国政府が支出した助成金の総額は42億ドル(約4600億円)に上り、事業の経済的純利益を大きく上回った。
世界の公海漁業の収益の大半は、中国(21%)、台湾(13%)、日本(11%)、韓国(11%)、スペイン(8%)の5か国・地域が占めていた。
研究者らは、公海漁業に対する助成金の見直しを求めている。論文の共著者である米カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UC Santa Barbara)のクリストファー・コステロ(Christopher Costello)教授(環境・資源経済学)は、「重点的な助成金改革を通じて税金の浪費を抑え、結果的に漁獲量を削っても高価値な漁業を実現できる」と述べた。
研究では、船舶自動識別装置(AIS)と船舶監視システム(VMS)を用いてほぼリアルタイムに3620隻の動向を追跡。さらに、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学(University of British Columbia)の「Sea Around Us」プロジェクトの世界の漁獲量データを利用して、総漁獲量を算出した。
この研究にはカリフォルニア大学サンタバーバラ校やグローバル・フィッシング・ウオッチ(Global Fishing Watch)、西オーストラリア大学(University of Western Australia)の研究者も参加した。(c)AFP