ホロコーストをどう伝えるか? 揺れるドイツの「記憶の文化」
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【6月16日 AFP】ナチス・ドイツ(Nazi)の歴史と厳しく向き合ってきたドイツ。しかしその「記憶の文化」は今、第2次世界大戦(World War II)とホロコースト(Holocaust、ユダヤ人大量虐殺)の生存者が減少し、極右政治が再び台頭する中で21世紀の新たな問題に直面している。
「これは私の出生証明書です。ナチスのかぎ十字が下に入っています」。フランクフルト(Frankfurt)にあるリービッヒ(Liebig)中等学校の図書館で、白髪のラルフ・ダンハイザー(Ralph Dannheisser)さん(80)は夢中になって話を聞く生徒たちにこう語りかけ、証明書を回した。
ダンハイザーさんが生まれたのは1938年。それから2年もしないうちに両親と共に米国に逃れたが、ドイツ語を話しながら育ち、第2次世界大戦とホロコーストに襲われた欧州に残る親戚らのために祈りを捧げて過ごした。
■「目を見れば、はっきりと分かった」
生徒たちは1時間以上にわたってダンハイザーさんを質問攻めにし、ポーランドのソビブル(Sobibor)の強制収容所やアウシュビッツ・ビルケナウ(Auschwitz-Birkenau)強制収容所で祖父母を亡くしたことがダンハイザーさんの幼少期にどんな影響を与えたか、米国の子どもたちは逃れてきたドイツ系ユダヤ人たちにどう反応したかなどを尋ねた。
「母は自分の両親や兄弟を殺害されたことから立ち直ることはできませんでした。私も祖父や祖母、おじ、おば、いとこを全く知らずに育ったので、心から喪失感を覚えました」とダンハイザーさんは振り返る。
話を聞いていた生徒の一人、ローナン・ショレー・リヒャルト君(15)は「非常に詳細な話で、授業ではこうしたことは学んでいませんでした」と言う。「どんなふうに感じたか、彼の目を見ればはっきりと分かりました。生徒として、子どもとして、私には想像もできません」
戦争とホロコーストの生存者が減少していることで、ドイツの全体主義の過去を未来の世代にどう伝えていくべきかという問題は、この数十年で最も深刻になっている。