【6月5日 AFP】イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相は4日、独ベルリンでアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相と会談し、中東情勢へのイランの介入は欧州への新たな大量難民流入の引き金となりかねないと警告した。

 イスラエルと欧州はイラン核合意をめぐって異なる立場を取っている。独仏英を訪問する3日間の欧州歴訪初日の4日、ネタニヤフ首相は核合意によってウラン濃縮活動の停止と引き換えに経済制裁を解除されたイランはシリアやイエメンで軍事的存在感を強めるために資金を振り向けられるようになっていると主張した。

 会談後にメルケル首相との共同記者会見に臨んだネタニヤフ首相は、イランは、シリアの人口の大半を占めるイスラム教スンニ派(Sunni)の人たちをシーア派(Shiite)に転向させようと画策していると述べ、これによりシリアで新たな宗教戦争が勃発する恐れがあり、そうなれば大量の難民が発生するだろうと警告し「彼らが向かう先はご存知のとおりだ」と付け加えた。

 2015年以降、ドイツには100万人を超える難民が流入しているが、その中ではシリア人が最も多い。難民問題はドイツ国内に政治的分断をもたらし、4期目を迎えたメルケル首相が率いる連立与党は選挙で議席を減らした。

 今回の欧州歴訪でネタニヤフ首相が訪問するドイツ、フランス、英国は、イランに核兵器を持たせないことを目的として2015年にイランと合意した「包括的共同行動計画(JCPOA)」の締結国。

 一貫して合意に反対してきたネタニヤフ首相は5日にエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)仏大統領と、6日にテリーザ・メイ(Theresa May)英首相と会談する。

 イラン核合意をめぐっては米国のドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領が先月、離脱を表明したが、英仏独の3か国は、合意は軍拡競争を抑止する最善策であり、ロシアと中国と共に引き続き合意を履行していくと言明している。(c)AFP/Deborah COLE