【6月4日 AFPBB News】「男だけどかわいい服を着たい」「男性体形に合うかわいい既製服がない」「性別に関係なく、着たい服を自由に着たいだけ」

 そんな思いを形にしたイベントが3日、東京大学(University of Tokyo)の安田講堂で開かれた。「ファッションポジウムー男女の垣根を越えたファッションの未来を考えるシンポジウム」で、ファッションが性別に縛られる閉塞(へいそく)感を打ち破り、アパレル業界にも風穴を開けようとする試みだ。

 同シンポジウムは、東大教授で4年前から「女性装」を始めた安冨歩(Ayumi Yasutomi)さん、メンズサイズのかわいい洋服ブランド「bulorange(ブローレンヂ)」を手がける松村智世(Tomoyo Matsumura)さん、トランスジェンダーの女優、西原さつき(Satsuki Nishihara)さんらが実行委となって開催。「男らしさ」「女らしさ」に捕らわれることなく、自分らしいファッションを自由に楽しめる世の中にしたいと企画された。

 基調講演を行った安冨教授は、「女性装」を始めた頃に白眼視されたエピソードに触れ、「中には気にしない人も、喜んでいる人もいる。差別の原因はする側にある」と話し、ファッションを超えて、性別や民族などで悩む多くの人を勇気づけた。

 実際に、女性は男性的な服装をしても「ボーイッシュだ」と理解されるのに対し、男性が「かわいい」服を着ることは現実的には許容されているとは言い難い。「ブローレンヂ」の松村さんによると、性別や体形に関係なくかわいい服を着たいというニーズは一定数あり、肩幅や着丈などをメンズサイズに合わせ、視覚効果も取り入れ、男性やアスリート体形に似合うワンピースなどを提案している。

 同時開催のファッションショーには、日本女子サッカーリーグ(なでしこリーグ)で活躍していた元選手や、男として生まれたが女性として生きるトランスジェンダーの人ら16人が登場。講堂の重厚な雰囲気の中、自己紹介文で素の自分をさらけ出しスポットライトを浴びながら歩いた。来場者も飛び入り参加してステージでポーズを取るなど、「体形」や「性別」から解放され、生き生きと歩くモデルたちに客席から惜しみない拍手が送られた。

 高校時代はラグビーに打ち込み、今は学業の傍ら女性モデルとして活躍する畑島楓(Kaede Hatashima)さん(25)は、「自分で自分のことを認めているから、女性になることが私の人生のテーマではない。子どもの頃からの夢、建築家になるべく努力していきたい」と話していた。(c)AFPBB News