英語の講義増加でオランダ語が消滅? 国内の大学に危機感
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【6月3日 AFP】オランダの各大学で英語による講義が増加していることから、キャンパスからオランダ語が消滅しかねないと講師や学生たちが警鐘を鳴らしている。中には政府の介入を求める人々も出ている。
オランダ国内の14大学ではウィリアム・シェークスピア(William Shakespeare)を生んだ英国の言葉で行われる講義がますます広がっている。このため教育省が現在、こうした事態に対処すべく提案を作成中だ。
来年に迫った英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット、Brexit)もこの状況を後押ししている。英語で学べるEU域内の大学を求めて留学生たちがオランダに集まってくるのだ。
国民の約9割が英語を話すというオランダは、英語がさほど得意でない欧州諸国の羨望(せんぼう)の的だ。さらに英国や米国の大学と比べて授業料が安いことも留学生が集まる要因となっている。
オランダの場合、英語が占める割合は大学院の修士課程で特に高い。教育省のミヒール・ヘンドリックス(Michiel Hendrikx)報道官によると、オランダ語で行われる講義の割合は学士過程の65%に対し、修士過程では15%にすぎず、講義の85%が英語で行われている。
オランダ最大の教職員組合「BON」を率いるアド・フェルブルッヘ(Ad Verbrugge)氏は「キャンパスからオランダ語が消滅しつつある」と危惧し、「欧州で前代未聞の事態」と深刻さを強調した。
オランダ王立芸術科学アカデミー(KNAW)も今年2月、「英語の重要性を過大評価するあまり、言語としてのオランダ語の適切な保護と品質維持を怠った」と自国を批判する報告書を発表している。
アムステルダム大学(University of Amsterdam)の哲学教授でもあるフェルブルッヘ氏はAFPの取材に「オランダの大学は欧州各国との留学生争奪戦で生き残るため、英語での講義を設けざるを得ない状況だ」と述べ、そうした状況を民族を滅ぼす大量殺害を意味する「ジェノサイド」に例え、「われわれは『ランギサイド(languicide、言語の大量殺害)』を目の当たりにしている」と語った。また、オランダ語という「少数言語が消し去られようとしている」と訴えた上で、「われわれは欧州の全ての言語や文化を守っていかねばならない。だが、オランダの学生はもはや自身の母語を使いこなせていない状況だ」と嘆いた。
フェルブルッヘ氏とBONは、講義の英語化を通じてオランダ語の抹殺を進めているとしてオランダの2大学を提訴している。(c)AFP/Charlotte VAN OUWERKERK