【6月2日 AFP】国連安全保障理事会(UN Security Council)は1日、デモ隊とイスラエル軍との衝突により多数の死傷者が出ているパレスチナの市民保護を求める決議案を採決したが、米国が拒否権を行使して否決された。

 米国は、パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)を実効支配するイスラム原理主義組織ハマス(Hamas)の暴力を非難する項目を加えた決議案を提出して対抗したが、同案も否決された。

 安保理で両決議案が否決されたこの日、イスラエルとガザ地区の境界のフェンス近くで若いパレスチナ人女性がイスラエル兵の銃撃を受けて死亡。イスラエルの攻撃によって死亡したガザ市民は3月末以降、123人となった。

 米国のニッキー・ヘイリー(Nikki Haley)国連大使は「国連がイスラエルに対してひどく偏見を持っていることが完全に明白になった」と主張。安保理理事国は「イスラエルへの非難には積極的だが、ハマスへの非難には消極的だ」と批判した。

 パレスチナ自治区のガザ地区とヨルダン川西岸(West Bank)の市民の保護を求める決議案は、アラブ諸国を代表する立場のクウェートが提出。中国やフランス、ロシアなどが賛成し、英国、エチオピア、オランダ、ポーランドの4か国が棄権した。

 中東和平担当のニコライ・ムラデノフ(Nickolay Mladenov)国連特別調整官は先月30日、ガザ地区は「戦争の瀬戸際に近い」と警告していたが、同地区の事態悪化への対応をめぐり、国連安保理はさらに行き詰った格好だ。(c)AFP/Carole LANDRY