【6月1日 AFP】ブラジルでは状況が混乱するとよく軍が動員される。だから、先月後半に始まったトラック運転手によるストライキの最中、兵士たちが配備されたのを見ても驚きはなかった。しかし今回違うのは、国全体を軍が乗っ取ることを求める大きな声が上がっていることだ。

 運転手たちがストを始めたきっかけは燃料費の高騰に対する抗議だった。だが、ストに対する大衆の支持からうかがえるのは、危機的状況にあるブラジル経済、不人気な政府、汚職のまん延などに対するもっと広範な不満だ。

 中道右派のミシェル・テメル(Michel Temer)大統領は対抗策として、ストライキに参加していないトラックがピケラインを通過するのを護衛するよう軍に命じた。しかし到着した軍に対し、ストライキの参加者の多くは怒りぶつけるどころか「今すぐ介入を!」の横断幕を掲げて歓迎した。

 軍に対する「今すぐ介入を!」というフレーズは、1964年から1985年まで続いた軍政への回帰か、あるいは少なくともクーデターを求める時に使われ、反政府デモや集会の中心ではなく周縁でたびたび叫ばれてきた。

 だが今、国内報道では軍の介入を支持するトラック運転手らのコメントとともに、このフレーズが大々的に扱われている。リオデジャネイロ郊外の製油所前で道路封鎖に参加しているトラック運転手のアレシャンドレ・バストス(Alexandre Bastos)さん(43)は「介入は独裁制とはまったく関係ない。われわれは軍の介入を求める」と語った。

 メッセージサービス「ワッツアップ(WhatsApp)」では「ストが7営業日と6時間以上続いた場合には憲法上、軍の介入が要請される」といったフェイクニュースがまことしやかに流されさえした。そしてこの噂の期限の5月29日が過ぎると、普段はネガティブな話題とされている軍の介入が突然、表舞台に出てきた。

「それは、軍を国家の問題の解決策とみなす国民の間で高まっている感情だ」と予備役の軍司令官は現地紙に語った。軍はクーデターを「意図してもいないし、求めてもいない」と同司令官は強調する。だが「もっと秩序だった国で、人々の暮らしもましだった」というのが独裁政権時代のイメージだと語った。「その通りだったと言うつもりはない。けれど、これが多くの人々が持っているイメージなのだ」

(c)AFP/Sebastian Smith