ドッグウオーカーならぬ人間ウオーカーがLAで人気 都会の孤独解消にも
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【6月4日 AFP】チャック・マッカーシー(Chuck McCarthy)さんは、1時間30ドル(約3200円)で散歩に行ってくれる「ウオーカー」だ。野外で新鮮な空気を吸いながら連れ立って歩き、みっちり運動もさせてくれるが、散歩中に木におしっこをするのは厳禁──。実は、彼が散歩させるのは犬ではなく、人間だ。
「ドッグウオーカー」ならぬ「人間ウオーカー」は、車社会の大都市ロサンゼルス初のビジネスとして、市民の健康意識と社会的包摂、すなわち社会で孤立した人々と共生する取り組みに一石を投じている。
「最初はドッグウオーカーになろうと思ったんだけど、以前に犬を飼っていた田舎とは違って、都市部ではふんを拾わないといけないでしょ? 街でパーソナルトレーナーの広告をたくさん目にしているうちに、ある日、彼女に思い付きを話してみたんです。『人間ウオーカーになろうかな』って」
マッカーシーさんは冗談めかして話すが、考えれば考えるほど、交友関係を提供するビジネスへのニーズを認識するようになったという。
「ザ・ピープル・ウオーカー(The People Walker)」は、マッカーシーさんが2年前に立ち上げた当初は個人事業だった。しかし需要が極めて高く、今や「ウオーカー」は35人にまで増え(取材当時)、ウェブサイトではウオーカーの選択や散歩ルートの指定までできるようになっている。
社会からの孤立は、うつや心臓病、糖尿病やがんなどに関係し、喫煙と同様に寿命を縮めることが複数の研究で報告されている。
先日、米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)に掲載されたニューヨーク大学(New York University)の社会学部教授エリック・クリネンバーグ(Eric Klinenberg)氏のコラムは、世界的に広がる個人主義が人々の孤独感の主な原因だと指摘している。
一方、この問題の原因は、人々が持つ友人の数が昔に比べて減ったことではなく、フリーランス労働者による「ギグ・エコノミー(インターネットを通じて単発の仕事を受発注する働き方や、それによって成り立つ経済形態)」の登場によって、それまでの労働者同士には欠かせなかったやりとりや社会的つながりが失われたことにある、と指摘する専門家もいる。