【5月30日 AFP】少数民族の人々に対する敵意は伝染しやすく、少数民族に対する破壊的な行動の受容性は、他者の行動次第で容易に変わるという研究結果を、チェコとスロバキアの合同チームが発表した。

 研究に参加したミハル・バウアー(Michal Bauer)氏とユリエ・ヒティロバ(Julie Chytilova)氏は23日、「反社会的な行動を規制する社会規範は、そうした行動が少数民族に向けられた場合、非常にもろくなる」とAFPに語った。

 研究は2013年に、チェコ・プラハのカレル大学(Charles University)にある経済研究所「CERGE-EI」と独ミュンヘンのマックス・プランク研究所(Max Planck Institute)、スロバキアのコシツェ(Kosice)にある工科大学が、多くの少数民族ロマの人々が暮らすスロバキア東部で行った。

 今年4月に米科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された論文によると、研究はスロバキア人が多数派の学校の13~15歳の生徒327人を対象とした実験に基づいたもの。

 実験では、生徒たちにそれぞれ2ユーロ(約250円)を渡した後、0.2ユーロ(約25円)を払う代わりにペアになった相手から1ユーロ(約126円)を取り上げてもらう破壊的な選択か、そのまま何もせず互いに2ユーロを保持するかを選んでもらった。

 次に生徒3人のグループを作り、スロバキア人とロマ人の典型的な名前20人のリストから選ばれた相手について、グループ内で順番に「破壊的」にするかどうかを選択してもらった。

 実験は、同じ民族の仲間が他集団の民族に害を加えた場合、その影響は仲間に害を加えた場合よりも増大するとの仮説を検証する目的で行ったものだが、その結果は驚くべきものだった。論文の指摘によると、少数民族に危害を加えるという意思決定において仲間の影響が著しいという。

 最初の生徒が少数民族の生徒に対して「平和的」な選択をした場合、次の生徒が「破壊的」な選択をする割合は19%だったが、最初の生徒が少数民族の生徒に対して「破壊的」な選択をした場合、次の生徒が「破壊的」な選択する割合は77%に上った。

 1番目と2番目の生徒の両方、または一方が「平和的」な選択をした場合、3番目の生徒が「破壊的」な選択をする割合はわずか18%だったが、1番目と2番目の生徒が両方とも「破壊的」だった場合、3番目の生徒の88%が「破壊的」な選択をした。

 バウアー氏とヒティロバ氏は「実験に参加した生徒たちは、ほかの生徒がロマ人の生徒に嫌がらせをしていると、ロマ人に対する憎悪的な行為は社会的にも容認されるものだと見なすようになった」と指摘している。(c)AFP