人間の脳の大型化、生活環境と文化がカギ? 英研究
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【5月24日 AFP】人間の脳は体に不釣り合いなほど大きい。大脳皮質(灰白質)が豊富なことである程度の知能の優位性が得られる一方、人体のエネルギーの5分の1を消費する大型の脳を維持するには多大な労力が必要になる。
大半の生物は小型の脳で、もしくは脳を持たないで繁栄している一方、人間は脳の容積を増やすために体の発育をある程度犠牲にすることを選択した。この異質な点に科学者らは長年、頭を悩ませてきた。
これがどのようにして、なぜ起きたかをついに解明したとする研究結果が23日、発表された。
人間の脳は主に、生きていく上で不可欠な食物と住居を得るための革新的な解決策を見つけ出し、その知識と知恵を子孫に伝えることを人間に余儀なくさせた環境ストレスに応じて拡大したと、今回の研究は示唆している。
英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された論文によると、人間の脳は人間同士の社会的相互作用の複雑化に伴って大型化したとする通説に、今回の研究は異を唱えているという。
実際はその逆が正しいのかもしれない。
論文の共同執筆者で、英セントアンドルーズ大学(University of St Andrews)のマウリシオ・ゴンザレス・フォレロ(Mauricio Gonzalez-Forero)氏は「今回の研究結果が興味深い理由は、社会的な複雑さの一部の側面が、人間の脳が大型化したことの原因ではなく結果である可能性の方が高いことを示唆しているからだ」と話す。
「人間の大型の脳は、社会の中でうまく立ち回ることに起因するよりも、環境上の問題解決と蓄積された文化によって生じたものである可能性の方が高い」
類人猿に似た人類祖先のアウストラロピテクス(Australopithecus)から現生人類のホモ・サピエンス(Homo sapiens)に至るまでに、人間の脳は大きさが3倍になった。
だが、これほど大型の脳を養うことは、体の発育が遅くなるという犠牲を伴うことが示唆されていた。これにより、人間の子どもは他の動物よりも長い間、親に依存した弱い存在であり続ける。