【5月21日 AFP】米カリフォルニア州のサンディエゴ動物園(San Diego Zoo)で、ミナミシロサイの雌が人工授精で妊娠したことが分かった。発表した米研究チームは、絶滅寸前の亜種キタシロサイの保全に向けた大きな一歩だと期待を示している。

 サンディエゴ動物園で飼育されている雌のミナミシロサイ「ビクトリア(Victoria)」は3月に人工授精を受け、妊娠約14週目に入っていることが17日に発表された。順調にいけば2019年夏に出産を迎える。

 サンディエゴ動物園保全研究所(San Diego Zoo Institute for Conservation Research)は声明で、「雄のミナミシロサイの精子を用いた人工授精で妊娠した。亜種キタシロサイの遺伝的回復に必要な科学的知見の発展を目指して現在進行中の研究における重要な節目だ」と発表した。

 ただ、同研究所のバーバラ・デュラント(Barbara Durrant)生殖科学部長は、ミナミシロサイの人工授精成功は喜ばしいニュースだが、健康な子どもが誕生するかどうかの判断は時期尚早だと述べた。動物園でのサイの人工授精は珍しく、無事出産まで至ったケースは数例しかないという。

 地球上に現存するキタシロサイは、わずか2頭で、いずれも雌。雄の最後の1頭だった「スーダン(Sudan)」は合併症のためケニアで3月に死んだ。

 体の大きいサイの天敵は自然界にはほとんど存在しない。しかし、サイの角は中国の伝統薬市場で需要が高く、また中東イエメンでも短剣の柄として珍重されることから、1970年代~80年代に密猟が横行しウガンダ、中央アフリカ、スーダン、チャドでキタシロサイがほぼ全滅。コンゴ民主共和国に20~30頭だけ残っていた最後の野生も1990年代後半~2000年代初頭の内戦で死んだとみられ、2008年までに野生のキタシロサイは絶滅してしまったとみられている。(c)AFP